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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

再生医療等技術

「医薬」よもやまばなし

2021年03月10日

再生医療に関連する技術は進展していて、難治性疾患等の治療への適用が期待されています。
この再生医療等技術に関して、これを推進すべく制定された規制の面から見てみましょう。

再生医療等に関する規制の枠組み

日本における再生医療の実用化を推進するために、2013年に法整備が進められました。
まず、再生医療推進法(再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律)が制定されました(2013年5月公布・施行)。これは再生医療の実用化促進を国の責務とした議員立法です。
これを受けて、再生医療等安全性確保法(再生医療の安全性の確保等に関する法律)と医薬品医療機器等法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)が成立しました(2013年11月公布、2014年11月施行)。

再生医療等安全性確保法は、医療機関における再生医療等の適正化、安全確保を目的としたもので、医師による再生医療等の医療行為を規制する法律です。

医薬品医療機器等法は従来の薬事法を改正したものですが、「再生医療等製品」が新たに定義されました(この改正以前には同類のものは医療機器として扱われていました)。医療機関における再生医療等において使用される企業的に製造された再生医療等製品について、その品質、有効性及び安全性の確保を目的とした法律となっています。
つまり、再生医療等製品は、医薬品医療機器等法に基づいて製造販売承認を受けて患者さんへ使用される製品ということができます。詳細は前回のコラム「再生医療等製品」を参照ください。

再生医療等に関する規制の枠組み

新たな治療法の開発の現状としては、医療機関や大学で行われる臨床研究からスタートすることが多い状況です。例えば、加齢黄斑変性症に対してiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞シートを移植する治療においても、これまで臨床研究として実施されています。
臨床研究の成果をより実用化に結びつけるためには、治験を通じて製造販売承認を取得し、保険診療として実施されることが望ましいと言えます。
つまり、「医事トラック」から「薬事トラック」への効率的な移行が望まれます。

再生医療等安全性確保法

再生医療等安全性確保法は、医事関連法規(医師法や医療法等)のもとで実施される医師による再生医療等の医療行為を規制する法律です。
対象とする「再生医療等技術」というのは、細胞加工物(細胞や組織を培養、活性化・分化誘導やその他の加工をして作成されたもの)を用いて、「身体の構造・機能の再建・修復・形成(狭義の再生医療)」「疾病の治療・予防」の医療を行う技術を指します。ちなみに、狭義の再生医療以外の治療・予防を含めるので、「再生医療等」という表現になっています。

細胞加工物を使用した再生医療等では、次に挙げる2種類のケースがあります。

  1. 特定の患者に対して作成した細胞加工物(特定細胞加工物)を使用して臨床研究や医療(自由診療や先進医療といった保険適用外)を行うケース
  2. 医薬品医療機器等法に基づいて製造販売承認を取得して、不特定多数の患者への使用を目的として製品化された「再生医療等製品」を使用して医療を行うケース

ここで、1番については再生医療等安全性確保法の適用対象となる訳ですが、2番の再生医療等製品を使用して承認を得た範囲で医療を行う場合は、再生医療等安全性確保法の適用外となります。また再生医療等製品を開発するために実施する臨床試験についても、医薬品医療機器等法が適用され、再生医療等安全性確保法は適用されないことになっています。

再生医療等技術のリスクによる区分

再生医療等安全性確保法が適用される再生医療等技術は、まだ医療技術として完全に確立したものではないことから、生命・健康に与える影響の度合いに応じて、3段階に分類しています。
✽ちなみに、iPS細胞・ES細胞はどんな細胞にも分化できる多能性を持つ人工幹細胞、体性幹細胞は体内にある幹細胞で特定の細胞に分化できるものです。

  • 第一種再生医療等技術:人の生命及び健康に与える影響が明らかでない、または相当の注意をしても重大な影響を与える可能性がある(高リスク)・・iPS細胞やES細胞等
  • 第二種再生医療等技術:相当の注意をしていても人の生命及び健康に影響を与えるおそれがある(中リスク)・・体性幹細胞等
  • 第三種再生医療等技術:上記以外(低リスク)・・体細胞を加工したもの

再生医療等を実施する場合には、提供計画を厚生労働大臣に提出する必要があり、リスク区分に応じて提出前委員会審査や提出後の手続きが異なります。


このように再生医療関連では医事・薬事という2つの道筋から進められる形になっています。
新たな医療技術がより安全性・有効性を確立した汎用性の高いものとして普及することで、これまで充足されなかった医療ニーズへの対応が期待されるところです。

私たちの健康に大きな役割を担う医薬品、そして医療・ヘルスケア。
そうしたQOL(Quality Of Life)産業界全般にわたって、そのプロセスや情報を支えるITを介して、日立医薬情報ソリューションズは人々の健康・QOL向上に貢献していきます。


2021年03月10日
吉田 亜登美

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