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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

医療関連制度

「医薬」よもやまばなし

2020年05月11日

病気になったとき、ちょっと面倒だとか嫌だなと思うことはあっても(感染リスク等が非常に高くなる非常時は別として)通常きちんと病院にかかることに大きな障壁はないですよね。これは社会として医療に関する仕組みができているからです。
今回は、日本におけるこの医療関連の制度・仕組みについて見てみましょう。

社会保障制度

日本においては憲法第25条に「生存権」の規定があります。第1項に国民の生存権の保障(すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する)、第2項に国民の生存権を保障するための国の責務(国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない)の条文が記載されています。

この憲法の条文に基づき、生活の安定が損なわれた場合に公的責任で生活を支える制度が「社会保障制度」です。
社会保障制度としては、一般に以下から構成されるとされています。

  • 社会保険制度:医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労働者災害補償保険
  • 社会福祉制度:児童・障害者・高齢者等の社会的弱者を保護する制度
  • 公的扶助制度:生活保護(健康で文化的な最低限度の生活を保障)等
  • 公衆衛生等

医療保険制度の概要

日本の医療保障制度は社会保険方式で、国民皆保険制度を採用しています。

社会保険方式というのは、医療保険制度に加入して保険料を支払う義務を負う一方、権利として医療機関を受診することができるというものです。
この医療保険制度というのは、加入者が保険料を出し合い、加入者及びその家族(被扶養者)が医療を必要とする際にそこから医療費(の一部)を支出する仕組みのことです。

日本は国民皆保険制度なので、すべての人が何等かの公的医療保険制度に加入することになっています。ここでいう公的医療保険制度は、国民健康保険、被用者保険(協会けんぽ・組合健康保険・共済組合等)、後期高齢者医療制度を指します。

日本の医療保障制度の特徴として挙げられるのは、

  • 国民全員が公的医療保険で保障されている
  • 医療機関を自由に選べるフリーアクセス制
  • 安い医療費負担で高度な医療を受けることができる

ということですが、社会保険方式を基本としつつも保険料だけで医療費が賄える訳ではなく公費が投入されています。実際には国民医療費のうち、保険料が5割程度、患者負担1割強、財政負担4割弱という状況です。
40兆円を超える国民医療費は増加傾向が続いています。
というのも高齢者の一人当たりにかかる医療費は高く、実質的な自己負担率も低くなっています。現役世代にとっては保険料の負担も大きく、また財政が既に国債に依存している状況での公費投入は将来世代への付け回しとも言え、ますます進む高齢化は医療保険制度の持続に対して大きな課題となっています。

保険診療の仕組み

公的医療保険が適用される保険診療の基本的な仕組みは以下のようになります。ここで「保険者」は医療保険の運営主体、「被保険者」は医療保険への加入者を指します。

① 被保険者は保険者に保険料を支払う
② 被保険者は病気やけがをした場合、保険医療機関で診療サービスを受ける
③ 被保険者は診療サービスを受ける際、医療費の一部負担金(自己負担分)を支払う
④ 保険医療機関は医療費(診療報酬)から一部負担金を除いた額を審査支払機関に請求する
⑤ 審査支払機関は保険医療機関からの請求を審査したうえで保険者に請求する
⑥ 保険者は審査支払機関に請求金額を支払う
⑦ 審査支払機関は保険医療機関に診療報酬を支払う

診療報酬請求(④のプロセス)に使う診療報酬明細書を「レセプト」と言い、保険医療機関が作成します。審査後のレセプトが保険者に送付されます。

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医療費

保険診療において提供される医療の範囲と価格は診療報酬として定められます。つまり保険診療における医療費は公定価格で、点数で表されます(1点=10円)。
病院で費用を支払った際にもらう領収書・診療明細書に点数が記載されています。ちなみに処方箋をもらって薬局で薬を受け取る場合は、調剤明細書が発行されます。薬の費用は薬剤料として記載されています。

医療費の患者負担割合は年齢によって決められています(70歳以上では所得が加味されます)。
自己負担が高額になる場合には、救済制度として高額医療費制度があります。

保険外診療

公的医療保険が適用されない診療を保険外診療(自由診療)と言います。
これには公的医療保険・診療報酬は適用されないので、自由料金で全額自己負担となります。
治療ではない予防接種や正常分娩、通常の治療を超えるとみなされる医療等はこれに該当します。

医療保険においては保険診療と自由診療を組合せる混合診療は原則禁止となっています。診療内容に保険が適用されない保険外診療が含まれると保険診療対象も含めて保険適用されず、全額が自己負担となります。

しかしながら、例外もあります。
保険外診療を併用した場合でも保険診療部分に通常と同様に保険が適用される制度として、保険外併用療養費制度があります。
例えば差額ベッドや歯科の金合金等はその部分だけが保険適用外(全額自己負担)で、普通の治療行為は保険適用になります。
また、今後保険適用になるかもしれない先進医療や医薬品の適応外使用といったものも併用が認められています。

医療施設の豆知識

医師の診療を受ける医療施設には、「病院」と「診療所(クリニック)」があります。
これは単なる名称ではなく、定義があります。
「病院」というのは20床以上の病床を有する医療施設、「診療所」というのは病床を有さないか19床以下の病床を有する医療施設を指します。
また、病床の区分としては、「一般病床」「療養病床」「精神病床」「感染症病床」「結核病床」があります。

私たちの健康に大きな役割を担う医薬品、そして医療・ヘルスケア。
そうしたQOL(Quality Of Life)産業界全般にわたって、そのプロセスや情報を支えるITを介して、日立医薬情報ソリューションズは人々の健康・QOL向上に貢献していきます。



2020年05月11日
吉田 亜登美

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