
身体の全てをコントロールしているといっても過言でもない「脳」。ヒトの脳は、基本構成は他の哺乳類と共通するものの、特に大脳が発達し、複雑な機能を持つに至っています。言語を操り、抽象的思考や高度な社会的認知が可能になっています。
今回はこの「脳」について、まずはその構造と機能の概観についてみてみましょう。
ヒトの成人の脳はおよそ1200~1500グラム。出生時は400グラム程度ですが、4-5才で成人の80%程度になります。
脳は、全循環血液量の約15%(約750mL/分)の血液を必要とし、全身で消費されるエネルギーの約20%を消費しています。
脳は頭蓋を構成する骨、所謂頭蓋骨で保護されています。
頭蓋を構成する骨としては、脳頭蓋と顔面頭蓋があります。
顔面頭蓋は頬骨や鼻骨、顎の骨等、脳頭蓋は頭部を覆う6種類8個の骨で構成されています。
脳は髄膜に包まれ、更に頭蓋骨に覆われています。髄膜は、硬膜、くも膜、軟膜の3層からなります。
脳の表面の構造としては、外側から、皮膚、頭蓋骨、硬膜、くも膜、くも膜下腔、軟膜、脳となっています。
くも膜下腔はくも膜と軟膜の間の隙間で、脳脊髄液(髄液)で満たされています。
髄液は、外部環境の変化や衝撃から脳を保護する役割を持ちます。
また、髄液は脳内の脳室と呼ばれる空間も満たしていて、細胞から排出された老廃物を脳組織から除去する役割もあります。
脳には、大脳、小脳、脳幹があります。
大脳は、知的活動に関わる大脳皮質、本能・情動・記憶に関わる大脳辺縁系、運動調節に関わる大脳基底核、脳幹との間にある間脳からなります。
大脳には多数の脳溝(皺や溝)があり、広げると脳の表面積は新聞紙1面分(約2200cm2)にもなります。
小脳は、大脳と連携して身体の運動制御を行います。
脳幹には、中脳、橋、延髄があり、生命維持に必要な活動を司る中枢を担っています。
大脳は左右2つの半球(右脳と左脳)に分かれていて、それぞれの半球は主に体の対側の運動・感覚を司っています。またその働きには左右差があり、左脳は言語的理解・計算・理論など論理的・概念的な思考、右脳は直感的理解や空間的能力、音楽といった機能に特化しています。
左右の半球は、脳梁を介して情報をやりとりすることにより、連携して機能することができます。
<大脳皮質と大脳髄質>
大脳の外側に位置する大脳皮質(灰白質・・灰色に見える)は、ニューロン(神経細胞)の細胞体が多く存在し、内側の大脳髄質(白質・・白く見える)は神経細胞の有髄神経線維(髄鞘・軸索)が集まっています。大脳皮質は情報処理の実行、大脳髄質はその情報を伝達する役割を持っています。
<大脳皮質>
大脳皮質は4領域に分けられ、異なる機能を持っています。局在した機能が連動して、感覚や運動、思考などの複雑な機能を実現しています。
大脳皮質には、嗅覚処理や情動・本能といった生存に関係する旧皮質と、高次機能を担う新皮質がありますが、大部分を新皮質が占めています。
<大脳辺縁系>
大脳の内側部にある大脳辺縁系は、情動(身体的・感情的な反応)・本能行動や記憶等に関わる複数の器官があります。
扁桃体は、外部の感覚情報に対する情動反応の処理・学習及び記憶を担っています。
海馬とその周辺部位(海馬台や歯状回など)は、脳内のあらゆる部位と情報の連絡があり、記憶の形成に重要な役割を果たしています。
<大脳基底核>
大脳基底核は、大脳の深部(大脳辺縁系の更に内側)にあり、大脳皮質と視床・脳幹を結びつけている神経核の集まりです。
身体の随意運動の調節や姿勢、筋肉の緊張を調整・維持するなどの機能を司り、眼球運動の制御、辺縁系への制御も行っています。
<間脳>
間脳は、脳梁の下の大脳半球の中心部にあって脳幹に繋がっており、視床、視床上部、視床下部から構成されています。
視床には、嗅覚以外の全ての感覚情報を集める中継、運動野や大脳基底核・小脳等と連携した運動機能調節の補助として働く役割があります。
視床下部は、自律神経系や内分泌系の中枢として働いています。また生命活動の調節の役割も果たしています。
視床上部には、メラトニンの合成・分泌による概日リズムの調節を行う松果体があります。
小脳は脳幹の背側にあり、大きさは大脳の約10%程度です。
小脳は、大脳皮質運動野や大脳基底核と連携して、身体の運動制御を行います。
小脳も系統発生学的に(進化的に)古い部分と新しい部分があります。
最も古い原小脳(前庭小脳)は、内耳にある三半規管や耳石器といった前庭系から平衡感覚の情報を受け取り、身体のバランスや眼球運動の調節を行います。
次に古い旧小脳(脊髄小脳)は、脊髄を伝わってくる筋肉の収縮や関節位置などの体性感覚の情報を受け取り、体幹や四肢の運動を制御します。
最も新しい新小脳(大脳小脳)は、大脳から感覚情報を受け取り、それを評価して適切な運動反応を導き、情報を大脳にフィードバックします。また、言語処理や運動に関する学習機能も果たしています。
脳幹は、大脳や小脳と脊髄の間の神経の通り道です。脳から出る末梢神経である脳神経12対のうち、10対は脳幹から出ています。
脳幹には、間脳と繋がる「中脳」、中脳と延髄を結ぶ「橋」、脊髄に繋がる「延髄」があります。
<中脳>
視聴覚情報や眼球運動の中継機能があります。光に対する瞳孔収縮の対光反射、対象に対してレンズ(水晶体)の厚さによってピントを合わせる調節反射と視線を内側に寄せる輻輳反射の中枢、歩行の中枢も中脳にあります。
<橋>
顔面の知覚や運動を司る神経核(神経の細胞体が集まった部分:脳神経と大脳を繋ぐ中継地点)や聴覚情報を扱う神経核があります。
<延髄>
延髄には、生命維持に不可欠な極めて重要な中枢があります。呼吸運動を司る呼吸中枢や呼吸運動と関係のある咳・くしゃみ・発声を司る中枢、循環器系の調節に関わる心臓中枢・血管運動中枢、消化に関わる咀嚼・嚥下・嘔吐・唾液分泌の中枢、涙液分泌や発汗の中枢などが延髄に存在しています。また、迷走神経といった自律神経系の神経核があります。
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2026年5月11日
吉田 亜登美