
体幹が大事とか、体幹を鍛えるといったことが話題になる「体幹」。
体の幹と書く体幹ですが、上肢と下肢を除く人体の部位を指します。通常、頭部は含めず、頸部・胸部・腹部・背部から成る胴体部分が対象です。
今回はこの「体幹」についてみてみましょう。
体幹を構成する骨格としては、脊柱、胸郭、骨盤があります。
<脊柱>
脊柱は体幹の軸になる背骨のことです。脊椎は、脊柱を構成する椎骨の総称です。
脊柱は、頸椎(首の骨)、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎から構成されており、主に体の支持、体幹の運動、中枢神経である脊髄の保護の役割を担います。
脊柱は、構成単位である椎骨が連結しています。
各椎骨は、椎体、椎弓(椎弓根・椎弓板)、横突起、棘突起、上関節突起、下関節突起などの部分から成り立っています。これらの椎骨は椎間板を挟んで上下に連結しており、椎間板(所謂背骨の継ぎ目)は脊柱の運動や荷重によって変形し、衝撃を吸収する役割があります。椎間板は椎骨の椎体部分の間にある円形の線維軟骨で、椎骨の微妙な動きを可能にする軟骨関節を形成します。これら椎骨・椎間板の周囲は靭帯によって支えられています。また椎弓が構成する椎孔が脊柱全体として脊柱管を形成し、その中を脳に繋がる神経である脊髄が通っています。
脊柱は、頸椎の前弯、胸椎の後弯、腰椎の前弯というカーブを持ち、これにより体のバランスを保っています。

<胸郭>
胸郭は、胸骨、肋骨、肋軟骨、胸椎(脊柱の一部でもある)から構成されています。
胸郭は、心臓や肺、大血管などの臓器を保護し、また呼吸筋(肋間筋・横隔膜)の働きによって胸郭を変形させることで呼吸運動を行っています。
胸骨は身体の正面を縦方向に走っている骨で、肋骨や鎖骨と関節を形成し(肋骨は肋軟骨を介して胸骨と繋がっている)、胸郭全体の安定性を保つ役割を果たします。
成人の胸骨には赤色骨髄(造血骨髄)が残っていて(小児では全身の骨に赤色骨髄があるが成人になると脂肪化して黄色骨髄になる部位が増える)、血液が作られます。
また、T細胞の分化、成熟など免疫系に関与する胸腺も胸郭が保護しています。
<骨盤>
骨盤は、上半身と下半身を繋ぐ部分で、左右の寛骨(腸骨、坐骨、恥骨が一体化したもの)、仙骨、尾骨から構成されています。
上半身の体重の支持、骨盤内にある大腸・小腸、泌尿器、子宮などの内臓保護、歩行や座るといった動作に関わって体のバランスを保持する役割があります。腸骨・坐骨の骨髄は、成人においても造血を行い、骨髄移植の際は通常ここから骨髄液を採取します。
全身には600以上の骨格筋があると言われますが、細かく名称があり、また複数の筋に対する総称や筋群の名称もあり、ちょっと解りづらいところはあります。
主な体幹の筋を挙げてみます。
腹部前面には、腹直筋があって体を前屈させる役割を持ちます。腹横筋は腹部の深層に位置し、腹圧を高めて体幹を安定させます。
腹部側面には、外腹斜筋があり、その内側には内腹斜筋があります。ともに、体を捻じる動作に関与します。
背面では、首から背中にかけて広がり、肩甲骨の動きをサポートする僧帽筋、背中の広い範囲を覆い、肩甲骨を引き寄せる役割を持つ広背筋があります。また、脊柱起立筋は背骨の両側に沿って走り、体を反らせたり起こしたりする役割を持ち、多裂筋は背骨の深層に位置して、脊柱の安定性を保ちます。
体幹の下部では、骨盤の底部に位置して内臓を支える役割を持つ骨盤底筋群、腰から骨盤を通り、太ももに繋がる筋肉で、股関節の動きに関与する腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)があります。
これらの筋肉が協力して働くことで、体幹の安定性と動的な動作が可能になります。
また、体の表層に近い部位(浅層)にあるか、深層部にあるかという観点で、アウターマッスル・インナーマッスルに分けられます。
体の深部に位置するインナーマッスルは、体幹の安定性を保ち、姿勢の調節や関節の保持の役割を果たします。主なインナーマッスルには、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群、腸腰筋、それに体幹の上部を支持して呼吸に関与する横隔膜があります。
体の表面に位置するアウターマッスルは、動的な動作に関与します。主なアウターマッスルには、腹直筋、脊柱起立筋、僧帽筋や広背筋があります。
体幹を鍛えるというのは、筋肉トレーニング(筋トレ)を指しますが、どちらの筋肉もバランスよく鍛えることが、健康な体を維持するために重要です。
体幹を構成する骨や筋に対する外傷はいろいろありますが、特に重篤なのは脊椎です。脊椎に外力が加わることによる脊椎の骨折・脱臼といった脊椎損傷では、交通事故や転落、スポーツ外傷といった高負荷によるもののほか、加齢などによる骨強度低下においては転倒などの軽微な外力で起こることもあります。ちなみに、脊髄損傷は脊柱管内にある脊髄(神経)の損傷です。
脊椎の変形や変性による疾患としては、以下のようなものがあります。
<椎間板ヘルニア>
椎骨の連結部である椎間板の変性や負荷による変形によって周囲の神経を圧迫することで、痛みや運動障害等を引き起こします。頸椎・腰椎の発生頻度が高く、男性に好発する傾向があります。
<脊柱管狭窄症>
椎骨の椎孔が形成する脊柱管が変形によって狭くなり、中を通る神経を圧迫することで、痛みや麻痺が起こるものです。発生部位としては腰部が多く、頸部でも起こります。腰部脊柱管狭窄症では、しばらく歩くと下半身に疼痛や痺れが起こって歩行困難になるものの、立ち止まる、あるいは姿勢を変化(前屈)させることで、回復する間欠跛行の症状が発現します。
<脊柱側弯症・脊柱後弯症>
脊柱側弯症は、本来は正面から見ると真っ直ぐに並んでいるはずの脊椎が、捻じれて左右に曲がっている症状、脊柱後弯症は、横から見て脊椎の並びが後方に弯曲して、背中の上部が丸くなり、姿勢が前傾するのが特徴です。いずれも脊柱が変形した疾患です。腰痛や背部痛、神経症状や内臓の機能障害が起こることがあります。加齢によって背中が丸くなって亀の甲羅のように見える亀背は、脊柱後弯症と関係していることが多いとされます。
<変形性脊椎症>
主に加齢によって椎骨の間にある椎間板が変性することで椎骨の間隔が狭まり、椎骨にできる異常な骨の突起(骨棘)や周囲組織の変形により脊髄から出た脊髄神経根が圧迫されて、慢性疼痛や可動域制限に繋がります。頸椎における変形性頸椎症、腰椎における変形性腰椎症が好発です。
<ぎっくり腰(急性腰痛症)>
急性の腰痛という症状を指しますが、腫瘍や感染、骨折や腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症といった原因疾患の特定できるものは除外します。
ちょっとしたはずみで激痛が走り、腰に負担のかかる運動機能に支障が出ますが、無治療であっても予後良好であり、まずは鎮痛剤で痛みを軽減しつつ、できるだけ通常通りの生活を維持することが推奨されます。
◇ 腰痛
成人、特に加齢に伴って多くみられるようになる腰痛。その大半(約85%)は原因を特定できない非特異的腰痛症です。
腰部への身体的負荷が危険因子ですが、重いものを持ち上げるといったことだけでなく、良くない姿勢の長時間保持や前屈姿勢での作業等によっても、腰背部の筋の疲労や過緊張が生じて、腰痛に繋がります。心理的要因で生ずることもあります。
安静にすることよりも、ストレッチや筋力トレーニングなどの運動療法が推奨されています。
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2026年2月10日
吉田 亜登美