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Column

筋と腱の話

「医薬」よもやまばなし

2026年01月09日

筋(筋肉)は身体を形成する組織の一つで、その収縮・弛緩によって様々な動きが可能になっています。
また、腱は筋と骨を、靱帯は骨と骨を繋いでいます。
今回はこの筋と腱・靱帯についてみてみましょう。

筋の種類

筋は、存在部位の観点で、骨格筋、心筋、内臓筋に分類されます。
骨格筋は体幹や四肢を構成し、一般に「筋肉」と言えば、この骨格筋を指すことが多いです。
心筋は心臓を、内臓筋は内臓を形成する筋です。

組織構造としては、横紋筋、平滑筋に分類されます。
骨格筋と心筋は横紋筋、内臓筋は平滑筋です。
骨格筋は細長い繊維状の多核細胞が並行しており、心筋では単核細胞がやや不規則に結合しています。
平滑筋は紡錘形の単核細胞が並行しています。

また、骨格筋は意識的に収縮させることのできる随意筋、心筋と内臓筋は自律的に収縮する不随意筋です。

骨格筋の機能

骨格筋の主な機能をみてみます。

まず、「骨格を動かす」ということが挙げられます。関節運動には複数の筋の収縮・弛緩が関係しています。関節に繋がる骨を挟んで、一方の骨格筋が収縮し、他方が弛緩することで、関節が屈曲・伸展し、これにより骨格を動かすことができます。例えば、肘関節を曲げる場合は、上腕二頭筋が主力筋として収縮し、上腕三頭筋が拮抗筋として弛緩します。伸ばす場合は逆に働きます。

骨格筋のうち抗重力筋が持続的に収縮することで、立位や坐位などの姿勢を保持することができます。背中の脊柱起立筋、腹部の腹筋群・腸腰筋、お尻の大臀筋、大腿の大腿四頭筋やハムストリングス、下腿の前脛骨筋や下腿三頭筋が挙げられ、重力による前傾や倒れ込みを防ぎます。

骨格筋には、内臓や骨、神経や血管を保護する役割もあります。
骨格筋が収縮する際に熱を発生し、体温を調節することができます。寒いときに体を動かすと温かくなります。
また、下肢の静脈で血管内に血液が溜まった場合には、周囲の骨格筋の収縮で心臓へ押し戻すという働きもあります。

骨格筋の構造

骨格筋は、筋原線維が数百~数千本集まって筋細胞膜で覆われて筋線維(筋細胞)となり、更に筋内膜で覆われ、筋線維が十数本集まって筋周膜で覆われた筋線維束となり、更に筋線維束が数~数十本集まって筋上膜で覆われて筋を形成するという、階層的な構造になっています。

筋原線維は、アクチンとミオシンという2種類のフィラメント(糸状構造)から構成されています。この2種類のフィラメントが筋原線維の長軸に沿って交互に規則正しく配列することで、横紋構造が形成されています。この基本単位をサルコメア(筋節)と言います。

骨格筋線維には、速筋と遅筋と呼ばれる2タイプがあります。ミオグロビンは、筋肉中に存在する酸素結合タンパク質で、筋肉内の酸素の貯蔵庫の役割を果たします。

  • 遅筋:色調は赤(ミオグロビンが多い)。収縮速度は遅いが、疲労耐性は高い(持久力がある)。エネルギー代謝は有酸素系。持続的な収縮や姿勢保持に適した筋に多い。
  • 速筋:色調は白(ミオグロビンが少ない)。収縮速度は速く瞬発力はあるが、持久力はない。エネルギー代謝は無酸素系(解糖系)。瞬発力を必要とする筋肉に多い。

骨格筋の収縮メカニズムは、神経からの刺激が筋肉に伝わることが起点になります。

神経(運動ニューロン)からの情報として神経伝達物質アセチルコリンが放出され、筋細胞膜のアセチルコリン受容体に結合します。これを受けて筋線維(筋細胞)表面で発生した活動電位が細胞内に伝わると、網目状に筋原線維を取り囲む筋小胞体からカルシウムイオンが放出されます。
カルシウムイオンがアクチンフィラメントに結合すると、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの結合変化により、アクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間に滑り込むような形になり、2つのフィラメントの重なりが深くなります。これによって、全体として筋が短縮(収縮)します。この収縮機序は「滑り説」と呼ばれます。筋収縮が終わると、カルシウムイオンは再び筋小胞体に取り込まれ、筋は弛緩します。

筋の外傷と疾患

筋の外傷としては、スポーツ外傷による筋組織の断裂・損傷があります。

「肉離れ」は何らかの状況により筋に強い筋力が発生し、自分自身の筋力で過伸展が起こり、筋組織の部分断裂をきたしたものです。ダッシュ時のハムストリングスや大腿四頭筋、ジャンプ動作時の腓腹筋の肉離れが生じやすくなっています。

筋挫傷は、強い打撲(鈍的な外力)によって深部の筋に筋損傷をきたしたものです。強打されて筋が骨に押し付けられ、骨に近い筋の深層が損傷し、腫れや筋内血腫(筋肉内の内出血)がみられます。コンタクトプレーで大腿四頭筋に起こりがちです。

中年以降に好発する五十肩(凍結肩)は、肩関節周囲炎の中でも頻発するものですが、レントゲン検査で特に異常はみられず、肩の疼痛と可動域制限が主症状です。痛みもあるし、日常動作にも支障がありますが、1~2年程度で自然治癒することが多い病気です。
股関節痛でも、変形性関節症といった関節の異常ではなく、筋(主に腸腰筋)の炎症・拘縮によることがあります。

筋に関する疾病としては、筋ジストロフィーがあります。筋ジストロフィーとは骨格筋の変性・壊死が起きる遺伝性筋疾患の総称で、指定難病になっています。
遺伝子変異により生成されるタンパクに異常があるために、その機能が障害され、細胞の正常な機能を維持できなくなり、筋肉の変性・壊死が生じます。その結果、骨格筋障害によって筋力が低下し、運動機能の低下が主症状となりますが、筋の拘縮・変形、それに呼吸障害や嚥下障害などいろいろな機能障害をもたらします。
尚、同様に運動障害をもたらす筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脊髄性筋萎縮症(SMA)は、筋そのものには原因がなく、筋に命令をつたえる神経(運動ニューロン)に異常が起こる病気です。

腱と靱帯

腱は、筋と骨を繋いで、筋の収縮を骨に伝える機能があります。筋収縮が腱に伝えられ、腱が骨を動かします。腱はコラーゲン線維からできています。

靱帯は、関節の外側にあって、関節を挟む両骨に結合しており、関節包の補強、安定性の向上、運動の円滑化、過度な運動の抑制の役割を持ちます。靱帯は骨と骨を繋いでいます。靱帯もコラーゲン線維からできています。

腱・靱帯の外傷

腱鞘炎とは、骨と筋肉を繋いでいる腱と、腱を包む腱鞘が擦れ合うことで炎症が起こる病気です。腱鞘炎は主に手指を使いすぎることによって発症するため、特に動きが多い手首や指などの場所に発症することが多いといわれています。

腱損傷は骨格筋と骨を結び付けている腱が損傷・断裂したものですが、代表的なものにアキレス腱断裂があります。瞬間的に生じる急激な筋収縮やオーバーユース(使いすぎ)、加齢による腱の変性が原因となります。

靱帯の線維が損傷・断裂した靱帯損傷は、瞬間的な過度な外力が主原因で、スポーツ外傷や交通事故によるものが多くなっています。



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2026年1月9日
吉田 亜登美