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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

細胞の不思議②-器官と細胞

「医薬」よもやまばなし

2024年06月10日

ヒトの体にある37兆個の細胞は単一ではなく、多くの種類があります。そして、それらが系統だって組み合わさることで、生命体としての個体が形成されています。
今回は、体を構成するいくつかの器官と細胞について見ていきましょう。

細胞・組織・器官

ヒトの体にはいろいろな器官があり、各器官は組織から構成され、そして各組織は細胞から構成されています。
生命活動の最小単位は細胞ですが、200を超える種類があり、それぞれの機能を果たしています。そして、同様の機能・形態を持つ細胞が特定の配列で集まったものが組織、そして複数の組織が特定の機能を目的に集合したものが器官です。また、複数の器官が連携して機能しているものを器官系と呼びます。
人体は多くの器官が統合されたものということができます。

組織には、上皮組織、筋組織、神経組織、支持組織があります。
上皮組織は体の表面(外表面)や内臓の内側を覆うもの(内表面)で、体の中と外界とを隔てています。上皮細胞の集合から成り、派生する分泌腺も含みます。
筋組織は収縮・弛緩する機能をもち、自分で動かせる骨格筋、消化管や血管の壁などにある意志では動かせない平滑筋、心臓の壁をつくっている心筋があります。
神経組織は情報の受容・伝達を担います。
支持組織には、体を支持する骨・軟骨と、組織と組織の間を結合する結合組織があり、体全体や器官など人体の構造を支えている組織です。尚、支持組織に血液・リンパを含む説もあります。

器官と細胞

では、いくつかの器官をみていきます。

<胃>

胃粘膜は上皮細胞に覆われていますが、無数の陥凹があり、その内部には胃液を分泌する胃腺があります。胃の働きの中心となる胃底腺には、ペプシノゲンを分泌する主細胞、胃酸を分泌する壁細胞、粘液を分泌する副細胞があります。
胃酸(塩酸)は食物とともに入ってきた細菌を殺菌し、食物中のタンパクを変性させることで消化を助けます。ペプシノゲンは塩酸と反応することでペプシンに変化します。ペプシンはタンパクを短いアミノ酸に分解する消化酵素です。粘液は胃自体を胃酸による分解から保護するもので、胃粘膜表面の表層粘液細胞からも分泌されます。
また胃酸分泌に関わるガストリンやセクレチン等の消化管ホルモンを分泌する内分泌細胞が胃や十二指腸にあります。

<膵臓>

膵臓には外分泌腺である腺房と内分泌腺であるランゲルハンス島があります。
腺房には胃から送られる酸性内容物を中和する電解質(主に重炭酸イオン)を分泌する腺房中心細胞や導管細胞、消化酵素を分泌する腺房細胞があります。分泌される消化酵素としては、糖質を分解するアミラーゼ、タンパクを分解するキモトリプシン・トリプシン、脂質を分解するリパーゼがあります。これらの電解質及び消化酵素が所謂膵液の成分です。
ランゲルハンス島には、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンを分泌するα細胞、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを分泌するβ細胞、インスリンやグルカゴンの分泌を抑制するソマトスタチンを分泌するδ細胞があります。

<筋>

骨格筋は筋線維の集まりですが、筋線維自体が1個の細胞(骨格筋細胞)で、文字通り細長い繊維状の外見です。筋形成の過程で複数の筋芽細胞が融合してできたものなので、複数の核が存在します(多核細胞)。
平滑筋を構成する平滑筋細胞は紡錘形の単核細胞です。
心臓を構成する筋肉である心筋は骨格筋と同様の横紋筋ですが、平滑筋と同様に不随意筋です。

<骨>

骨は細胞成分と細胞外基質(骨基質)から構成され、細胞成分としては主に骨形成を行う骨芽細胞、骨の維持・調整を担う骨細胞、骨吸収を行う破骨細胞の3種類の細胞が存在します。
骨芽細胞は骨基質タンパクを産生・分泌し、骨基質の石灰化を誘導します。分泌した骨基質に埋まると骨細胞になります。骨基質は、コラーゲンを主とする基質タンパクにリン酸カルシウムの結晶(ハイドロキシアパタイト)が沈着しています。
骨細胞は石灰化の調節、破骨細胞の誘導、骨への力学的刺激の感知を担います。
破骨細胞は骨基質の分解・吸収、すなわち骨の破壊を行います。

<神経>

神経は、情報の伝達・処理を行う神経細胞(ニューロン)と、それを支持・保護する神経支持細胞によって構成されます。
神経細胞では、本体である細胞体から複数の細長い突起(軸索)があり、この突起を使って他の神経細胞と接続し、情報の伝達を行います。
中枢神経における神経支持細胞であるグリア細胞(神経膠細胞)は、神経伝達物質の回収や物理的にニューロンを支えるアストロサイト(星状膠細胞)、髄鞘(軸索に巻き付いて絶縁体として働く)を形成するオリゴデンドロサイト(希突起膠細胞)、貪食作用をもつミクログリア(小膠細胞)から成り、ニューロンが正常に機能するように働きます。尚、末梢神経では神経鞘細胞(シュワン細胞)が機能します。

<心臓>

心臓は、心筋細胞・血管構成細胞(血管内皮細胞・血管平滑筋細胞)・線維芽細胞から構成されています。線維芽細胞は心臓組織の修復や再生に関与します。心筋細胞は1個でも収縮することができますが、心臓では心筋細胞が同期して収縮・拍動することで、血液を送り出すポンプとして機能します。

<血液・免疫細胞>

血液は、液体部分の血漿(水と電解質や血漿タンパクなど)と細胞成分である血球から成っています。血球としては、赤血球、白血球、血小板があります。
白血球には、骨髄系の顆粒球(好中球・好酸球・好塩基球)と単球、リンパ系のリンパ球(B細胞・T細胞・NK細胞)があります。同じ起源をもつマクロファージ・樹状細胞及び肥満細胞と白血球が免疫細胞です。
免疫系には特定の中心臓器はなく、免疫細胞や抗体・補体等の物質、骨髄やリンパ節などのリンパ器官といったもので構成されています。

<感覚器>

耳で音を感知するのは、内耳の蝸牛にある有毛細胞です。有毛細胞は音の振動を感じると、電気信号に変えて大脳に伝達することで音として認識されます。
眼の網膜にある視細胞(錐体細胞・杆体細胞)は光や色を感知します。錐体細胞は色を識別でき、杆体細胞は暗い場所でも光を感知することができます。
においは鼻腔にある嗅細胞、味は舌にある味蕾の中の味細胞が感知します。



ヒトの体では、37兆個と言われる細胞が雑多に集まっているのではなく、様々な機能をもつ細胞が統制の取れた形で集合し、その役割を果たしています。



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2024年6月10日
吉田 亜登美