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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

デジタルヘルス その2

「医薬」よもやまばなし

2024年02月09日

デジタル技術を医療・健康分野へ応用したデジタルヘルスは、「デジタル技術」の進展に合わせて、医療・ヘルスケアに関する「デジタルデータ」の蓄積と「アプリケーション」の普及により、個人のライフステージに応じたサービスを提供していくものです。また、こうしたデジタルヘルスが適切に推進されるように、規制等の整備が必要になります。
今回は、健康・医療に関するデジタルデータに着目してみていくことにしましょう。

EMR/EHR/PHR

医療に関するデータといえば、まず思い浮かぶのはカルテ(診療録)ではないでしょうか。
電子カルテの導入も大規模病院を中心に進んでいますが、診療所でも半数ほどは導入されている状況です。
電子カルテは、EMR(Electronic Medical Record)と呼ばれ、基本的に個々の医療機関が運用するものを指します。

これに対し、EHR(Electronic Health Record)は、医師の所見と診断を記録する診療録(カルテ)に加えて、患者の既往歴といった基礎情報や病態把握に必要な各種検査の結果、処方箋などを電子的に記録・管理するもので、医療機関の間で医療情報を共有・活用する仕組みを指します。
医療機関(病院・診療所)の機能分化・連携(かかりつけ医と高度医療、急性期・回復期・慢性期等)による地域医療や救急医療などで有用となります。

医療機関で利用されている電子カルテシステムや病院情報システムは、それを提供しているシステムベンダ独自の仕様になっています。
そのため、データ共有・交換のための規約が必要となります。

PHR(Personal Health Record)は、個人が自身の健康・医療・介護に関する情報を生涯に渡ってデジタル技術を活用して管理・活用するものです。EHRで対象とする医療情報に加え、日常生活で発生する健康関連データや健診データも対象に捉えています。
特に、ウェアラブルデバイスから得られる血圧・心拍等のバイタルサイン、歩数や運動量・消費カロリー、睡眠、スマートフォンを使った食事・摂取カロリーといった、ライフログの収集・管理が可能になってきています。

EMR/EHRでは管理主体が医療機関であるのに対し、PHRでは個人が自分で自分のデータを管理するという考え方に基づいています。

RWDと医療ビッグデータ

「実世界のデータ」を指すRWD(Real World Data)は厳密な定義はないようですが、一般的に医療に関するリアルワールドデータといえば、「医療現場での日常の臨床(診療)から得られる患者情報(デジタルデータ)の総称」というものです。
このRWDとしては、以下のようなものがあります。

□ 患者レジストリ(疾患登録システム):特定の疾患を持つ患者の詳細なデータを多施設から特定の目的のために収集・登録するシステム。

  • がん登録:日本でがんの診断を受けた人のデータ(患者・医療機関基本情報/腫瘍情報/治療情報/生存情報等)を蓄積したデータベース
  • 臨床データベース(NCD;National Clinical Database):診療科単位で手術・治療の内容・成績などの情報を蓄積したデータベース

□ 保険データベース:公的医療保険データを集積したデータベース。

  • レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB):窓口負担分以外の医療費を支払機関に請求する際に必要な「医療行為の内容や診察開始日などの情報」や、「特定健診の診断結果など」を集めた医療データベース
  • DPC(診断群分類)データ:DPC制度(入院医療費の包括支払制度)対象から収集される、病名や診療行為などの診療実態データ(レセプトデータよりも詳細にまとめられたもの)
  • 国保データベース(KDB):各都道府県に設置されている国民健康保険団体連合会が管理している医療と健康、介護のデータを蓄積したデータベース

□ 電子カルテなどから収集したデータベース

  • 医療情報データベース(MID-NET):PMDAが医薬品等の安全対策の高度化を目的に構築。拠点病院から収集した電子カルテ・検査情報・レセプト・DPCデータを集約。

これに相対する「リアルワールドでないデータ」というのは、制約のある環境下(実験的・管理的)で収集されたデータです。例えば、臨床試験では様々な制約があります。対象患者については数が少なく、高齢者・小児や特殊背景(腎機能・肝機能の障害や妊産婦など)を除外します。また他の医薬品の影響を除外できるように併用薬を制限するといったように、試験デザインがシンプルで、評価期間も実際の治療における投与期間に比べて短くなります。

また、患者だけでなく、健常者も含めた生活者から、スマートフォンアプリ、ウェアラブルデバイスや家庭用診断デバイスなどを介して取得されたデジタルデータもRWDに含める場合もあります。

医薬に関わる領域において、RWDは活用されるようになっています。
医薬品の承認申請においては、外部対照(ランダム化比較試験に参加していない患者で構成された対照群としてRWDを利用)や公知申請(日本未承認の海外の医薬品に対してRWDを科学的根拠として臨床試験の一部/全部が免除されて国内承認が可能となる)での活用、開発計画や臨床試験デザインの検討への利用が挙げられます。
製造販売後調査(使用成績調査・製造販売後臨床試験)では、医療情報データベースを用いて医薬品の副反応や安全性を確認する製造販売後データベース調査が認められており、また、薬剤の適正使用促進にも活用されます。

健康・医療に関するデータに関わる法整備

2018年に「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(次世代医療基盤法)」が施行されています。これは、カルテ等の個々人の医療情報を匿名加工(個人情報を個人が特定できないよう、また個人情報を復元できないように加工すること)し、医療分野の研究開発での活用を促進するための法律です。

また、医療情報を電子的に扱う際の安全管理の観点から、厚生労働省・経済産業省・総務省が策定したガイドライン「3省4ガイドライン」が制定されています。



健康・医療に関するデジタルデータは蓄積されてきており、活用基盤も整備されてきています。


私たちの健康に大きな役割を担う医薬品、そして医療・ヘルスケア。
そうしたQOL(Quality Of Life)産業界全般にわたって、そのプロセスや情報を支えるITを介して、
日立医薬情報ソリューションズは人々の健康・QOL向上に貢献していきます。


2024年2月9日
吉田 亜登美

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