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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

デジタルヘルス その1

「医薬」よもやまばなし

2024年01月12日

昨今、「デジタル」という言葉が種々の場面で見かけられるようになっていますが、本来の意味からはかなり拡大されて使われているように見えます。
この「デジタル」も健康・医療に大きく関わってきています。
今回は、この「デジタル」と健康・医療の関係の前に、まずは「デジタル」について概観していくことにしましょう。

「デジタル」の意味するところ

「デジタル」は「アナログ」に対する言葉です。アナログが連続量として表現されるのに対し、デジタルは離散値として表現されます。
時計で言えば、アナログ時計は長針・短針を使って時刻を連続量として表すのに対し、デジタル時計では数字で示すので、表示の桁によって、分単位であれば1分ごと、秒単位であれば1秒ごとの離散値になります。

最近、「デジタル化」や「デジタルトランスフォーメーション」という使われ方をする「デジタル」は、情報通信技術(ICT)を利用することが前提になっています。またここでは、従来、情報通信技術(ICT)と呼んでいたものを「デジタル技術」とも呼ぶようになっています。これは、従来の情報技術・通信技術に加えて、AIやIoTといった新技術の登場やロボティクスといった技術への適用や拡張・融合などが、それまでのコンピュータ化の適用を超える変革をもたらすものとしての期待があることの表れとも考えられるようです。

日本語の「デジタル化」には2つの意味があります。
デジタル化(Digitization)は、現実世界(Physical空間)の事象をコンピュータ(Cyber空間)で扱える形にすること、つまりデジタル技術≒情報通信技術(ICT)で扱うことのできるデータ・情報にすることです。
もう一つのデジタル化(Digitalization)は、デジタル技術・デジタルデータをもとに新しい価値を創造するということを指します。

デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation;DX)の概念は、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」が最初とされます。
経済産業省「DX 推進ガイドライン」(2018年)では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

Digitization(デジタルデータ化) ⇨ Digitalization(新しい価値創出) ⇨ DX(ビジネス変革と競争優位性確立) の3 stepで進展させるということになります。

◇ デジタルの語源

「デジタル」はラテン語の「digitus」(指)に由来しています。
数を数える時に指を使っていたことから、数えられる数字(離散値)を意味するようになったと言われています。

デジタル技術

従来のICTにおいても、コンピュータのポテンシャルは各段に進歩を遂げていますし、通信の速度や網羅性でも進展をみることができます。
ではいま、「デジタル技術」が殊更脚光を浴びている要因は何でしょうか。
特筆すべき要素技術をいくつか見てみましょう。

コンピュータの進展によって、コンピュータ上で扱うことのできるデータ・情報が増加し、蓄積されます。いろいろな業務がシステム化されることによって、デジタル化されたデータが蓄積されていくことになります。例えば、紙カルテから電子カルテに移行することによって、医療記録がデジタルデータになったように。

モノのインターネットとも言われる「IoT」は、いろいろなモノがネットワークに繋がることで、情報交換やシステム連携が可能となる仕組みです。
個々の機器(デジタルデバイス)で測定されたデータも通信を介してデジタルデータとして管理されるようになります。
特に、身体に装着して利用するウェアラブルデバイスには、スマートウォッチ(腕時計型)・スマートリング(指輪型)、スマートグラス(眼鏡型)などがあります。メール等の送受信をはじめとした情報端末としての機能もありますが、スマートウォッチを中心に運動量や心拍数などの日常生活における生体情報の測定・データ収集機器としての機能を持つものがあります。センサー機能によって血圧や心電図など取得できるデータ種が拡張されます。

これらデジタルデータの収集が多岐に渡ることで、蓄積されるデータ量は膨大になっています。
巨大・複雑なデータの集合体を指す用語に「ビッグデータ」がありますが、特性としてデータ量(volume)、入出力・処理の速度(velocity)、データ種・情報源の多様性(variety)があると定義されています。

そして、データ加工のためのETLツール(抽出Extract・変換Transform・格納Load)や、アナリティクス(分析・解析)、データマイニング(知見探索)、ビジュアライゼーション(視覚化)を行うためのビジネスインテリジェンス(BI)がデータ活用のために使用されます。

データ活用面では、人工知能AIがいろいろな場面で適用されるようになってきました。
AI自体は1950年代から研究されていますが、現在、機械学習手法の一つであるディープラーニング(深層学習)技術とコンピューティング技術の発展を契機とした第3次AIブームにあります。ディープラーニングでは、知識を与えることなく、膨大な情報を使った学習・推論が可能となりました。
画像認識、音声認識、自然言語処理、予測・推論・制御など、従来手法を超えて、多岐に渡って適用されています。

ロボットは、種々の技術が集約されたものです。駆動・構造系、知能・制御系、センサー系の要素技術を有し、ある程度の自律性をもつ機械システムということができます。知能・制御系は頭脳と神経網、駆動・構造系は筋肉や骨格、センサー系は感覚器官に例えることができます。
ロボティクス(ロボット工学)は、機械工学、電気電子工学、情報工学など複合的な領域といえます。
ロボットは人間では難しい動作や精度、連続性を可能にします。
医療関連でも、医療現場の手術支援ロボット、リハビリテーションにおける機能回復や介助・介護を担う生活支援ロボットなどが実用化されています。

現実世界と仮想世界を融合し、現実にはないものを知覚できる技術も進展しています。その技術を総称して、XR(クロスリアリティ)と呼んでおり、以下のようなものがあります。

  • VR(仮想現実)・・仮想世界を現実のように感じることのできる技術
  • AR(拡張現実)・・現実世界に仮想世界の情報を重ね合わせて拡張する技術
  • MR(複合現実)・・現実世界と仮想世界をより密接に複合(融合)する技術

医療では、手術シミュレーション等への応用が考えられます。



技術の進展は健康・医療を大きく変える要素の一つとなっています。



※用語に関しては、厳密な定義が存在しないものもありますが、ここでは比較的一般に使用されているものを記載しています。

私たちの健康に大きな役割を担う医薬品、そして医療・ヘルスケア。
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2024年1月12日
吉田 亜登美

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