感染症を引き起こす病原体として、特に細菌は多種のものが知られています。地球上には数百万種の細菌が存在するとの推定があるようですが、その中で特定されているものは30000種、ヒトに対する病原性を持つものも500種以上知られています。
今回は、感染症のうち、細菌についてみてみましょう。
細菌は大きさ1μm程度の単細胞生物です。
細胞壁を持ち、核膜を持たない原核生物です。動植物などの真核生物の細胞では、核膜に包まれた細胞核が存在してその中に染色体DNAがあるのですが、原核生物では染色体DNAが核膜に包まれずに存在している形になります。
細菌は単体で増殖能を持っており、この点はウイルスと大きく異なります。
細菌の基本構造としては、リボソーム、核様体、細胞壁、細胞膜、細胞質があります。
細菌によっては、莢膜、芽胞、線毛、鞭毛などの特殊な付属器官(オプション構造)を持つものもあります。
細菌の形態としては、基本的に球菌、桿菌、らせん菌に分類されます。
細菌の増殖における酸素の必要性の面からは、好気性菌、通性菌、嫌気性菌に分類されます。
また、細胞壁の構造の違いにより、グラム陽性菌とグラム陰性菌に大別されます。これは細菌を色素で染色するグラム染色に行った場合に反応が異なり、その色で区別できるものです。
グラム陽性菌の細胞壁はペプチドと糖からなるペプチドグリカン層ですが、グラム陰性菌ではペプチドグリカン層は薄く、リポ多糖体とリン脂質から構成される外膜があります。
細菌による感染症に対する治療薬としては、細菌を殺滅させる、ないし増殖抑制する「抗菌薬」が用いられます。
抗菌薬は、殺菌作用を持つものと静菌作用を持つものに大別されます。尚、「抗菌」という用語はこの作用両方を包含します。
抗菌薬は作用機序によって、以下のように分類されます。
抗菌薬の作用の強さを「活性(抗菌活性)」と言い、ある抗菌薬が抗菌活性を有する微生物の範囲を「抗菌スペクトル」と言います。このスペクトルは有効な対象を示すもので、抗菌活性の強さとは関係しません。
原因菌が不明または特定に時間を要するといった場合には、主に広域スペクトルを有する抗菌薬が使用されます。原因菌が判明すると、適切な抗菌薬(主に狭域スペクトルの抗菌薬)へと変更します。
種々の抗菌薬が実用化されており、感染症の原因や状況に応じて適切な薬剤が使用されます。
かなりの種類の病原性のある細菌が明らかとなり、それへの対応が確立されてきています。
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2023年02月10日
吉田 亜登美