古くて新しい病気である感染症の概略について、前回の感染・病原体に引き続き、今回は、検査と治療をみてみましょう。
病原体を同定するための微生物学的検査として、以下の検査があります。
ウイルス検査としては、遺伝子検査や免疫学的検査が用いられます。
遺伝子検査としては、PCR検査が挙げられます。PCRというのは、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain
Reaction)のことで、病原体の遺伝情報を持つDNAの一部を複製・増幅させる方法です。
ウイルスでは核酸としてDNAまたはRNAの一方を持ちます。RNAはPCRでは増やせないので、新型コロナウイルスのようにRNAを持つウイルスでは、ウイルスのRNAからコピーした一本鎖DNAを作成する必要があります。検体から抽出したRNAよりDNAを作成し、ここに検査対象のウイルスに特化したプライマー(増殖させたい配列を持つ合成DNA)を入れて、ポリメラーゼ(核酸ポリマー・長鎖を合成する酵素)によって、プライマーの結合したDNAを繋いで二本鎖DNAを形成していきます。ウイルス特化プライマーに対応する配列があってDNAが増えていれば、そのウイルスに対して「陽性」ということになります。
抗原抗体反応を利用する免疫学的検査としては、抗原検査と抗体検査があります。
抗原検査では、抗体を用いて検体中の病原体がもつ特有のタンパク(抗原)を検出します。これにより、現在、病原体に感染しているかどうかがわかります。
抗体検査では、抗原を用いて検体中の病原体に対する抗体を検出します。これにより、過去に病原体に感染したか、あるいはワクチン接種のいずれかによって、体内に抗体があるかどうかがわかります。
感染症に対する治療の選択肢としては、以下があります。
感染症の典型的な経過としては、感染 ⇒ 潜伏期 ⇒ 発症 ⇒ 治癒となりますが、感染後の微生物(細菌・ウイルス)とヒト(宿主)の関係をもう少しみてみると、以下のようなパターンがあります。
感染症の感染に対応するには、病原体の正体を特定し、それに対する適切な治療を選択することが重要となります。
◇ スクリーニング検査の妥当性(精度)
ある疾患に罹っているかどうかを調べるスクリーニング検査において、その妥当性(精度)の評価に以下の指標が使われます。
*有病率の低い集団では陽性的中率は低下し、陰性的中率は高くなる
尚、陽性率というのは、検査数に対する陽性数を示しています。陽性数と陽性率の動向を合わせて見ることで、検査の充足度と流行の状況を把握することはできますが、陽性率自体は検査の精度とは関係しません。 ・・陽性率=(a+b) / (a+b+c+d)
a | b(偽陽性) | a+b | |
c(偽陰性) | d | c+d | |
a+c | b+d | a+b+c+d |
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2023年01月12日
吉田 亜登美