免疫は自己にとっての異物を判別して排除するという生体に備わった自己防御の仕組みです。
前回は、免疫系に作用する薬として「免疫反応を制御するくすり」をみてみました。
今回は「免疫の仕組みを使ったくすり」として、抗体医薬品についてその概要をみてみましょう。
抗体は、抗原と特異的に結合することにより様々な免疫反応を引き起こすもので、獲得免疫の主役の一つです。
病原菌などの本来は体内にない異物が体内に入ってくると、その異物にある目印(抗原)と特異的に結合する抗体をつくり、異物を無毒化します。これは「抗原抗体反応」と呼ばれ、自然に備わっている免疫機能です。
ひとつの抗体には特定の抗原だけを認識する「特異性」があります。
抗体は異物にある抗原と結合すると、免疫を担う細胞を活性化させて異物を分解(排除)します。その作用には以下があります。
抗体医薬品は、この抗体の機能を利用した医薬品です。標的に対する選択性・親和性が高いのが特徴です。
抗体医薬品は一般に細胞内に入り込むことが難しく、細胞外の可溶性タンパクもしくは膜表面のタンパクを標的分子(抗原)とすることが多くなっています。
一種類の抗体は特定の抗原だけに作用するので、その抗原をもっていない他の組織や細胞に作用することは少なく、副作用も少ないと考えられています。
バイオ医薬品の中で先行しているのが、この抗体医薬品です。
抗体医薬品の作用メカニズムにはいくつかのタイプがあります。
<抗原抗体反応>
<細胞膜にある受容体にリガンドが結合して細胞内のシグナル伝達が起こることに対する作用>
<免疫細胞に働きかけて異物(標的細胞)を攻撃する作用>
<抗体が標的を認識し、結合している薬剤が異物(標的細胞)を攻撃する作用>
上述のADC(抗体薬物複合体)、 Enhanced ADCC(抗体依存性細胞傷害活性増強)も発展形ですが、これ以外にも高機能化が図られています。
◇モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、抗原の特定の部位に鋭敏に反応する均一な抗体です。単一の抗体産生細胞に由来するクローンから作られている抗体のことで、単一の抗原決定基を有しているという特徴があります。
抗原は一般には複数の抗体認識部位(抗原決定基)を含むため、自然状態で生体に誘導される抗体は単一ではない「ポリクローナル抗体」になります。
抗体医薬品の一般名に用いられている「-マブ(-mab)」というのは「モノクローナル抗体(monoclonal antibody)」の略です。ただ2021年11月のINN(国際一般名)ルール改定により、この「-マブ(-mab)」は使用されなくなったようです。
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2022年09月13日
吉田 亜登美