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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

免疫と病気

「医薬」よもやまばなし

2022年07月11日

免疫は人体に備わった自己防御の仕組みで、病気の予防や発症、そして治療にも関わっています。
免疫が正常でないことによって、病気や身体の異常に繋がることがあります。
今回は、免疫と病気の関係についてみてみましょう。

免疫不全

免疫不全というのは、免疫が上手く働かず、生体防御がきちんと機能しない状態です。
免疫不全は、先天的なものと後天的なものに分けられます。

  • 原発性(先天性)免疫不全症
    先天的な遺伝子異常による免疫系の欠陥。
  • 続発性(後天性)免疫不全症
    生来は正常であった免疫系が、他の原因によって機能障害を受けて発症。

原発性は多くなく、大部分は続発性です。続発性(後天性)免疫不全症の原因は、HIV感染症のような感染症、悪性腫瘍(がん)、自己免疫疾患、薬剤や放射線照射といった医療行為によるもの(医原性)や亜鉛欠乏症といったものまで様々です。

また、免疫不全によって、病原体への感染において、反復、難治性、重症化などが起こる易感染性が問題となります。腫瘍においても、免疫低下によって異常細胞の排除が低下して、悪性腫瘍が発生しやすくなるということもあります。

免疫不全による病気もあれば、病気が起因して免疫不全になるものもあるということです。

免疫制御異常(免疫反応過剰)

免疫制御が上手くいかず、免疫反応が過剰に起きてしまうことによる病気があります。
外来の物質に対するアレルギー疾患、自己由来の物質に対する自己免疫疾患が代表的なものです。

アレルギー反応というのは、免疫反応が過剰に起きて、生体を守るはずが生体を傷つけてしまうものです。
アレルギーにはその機序によって、大きく4つのタイプがあります。
狭義のアレルギー疾患というときは、Ⅰ型アレルギーを指します。
ⅠーⅢ型は液性免疫(抗体中心)、Ⅳ型は細胞性免疫(リンパ球中心)が関与します。

  • Ⅰ型アレルギー
    即時型(アナフィラキシー型)~気管支喘息、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎 ...
  • Ⅱ型アレルギー
    抗体依存性細胞傷害型(臓器特異的自己免疫疾患に多くみられる)~橋本病/バセドウ病、重症筋無力症 ...
  • Ⅲ型アレルギー
    免疫複合体型(全身性自己免疫疾患に多くみられる)~血清病、ループス腎炎、急性糸球体腎炎 ...
  • Ⅳ型アレルギー
    遅延型~ツベルクリン反応、Stevens-Johnson症候群/中毒性表皮壊死症、アレルギー性接触皮膚炎、移植片対宿主病 ...

自己免疫疾患は、自己成分が抗原となって自己抗体を産生してしまい、過剰な免疫反応によって生体組織が傷害を受けるものです。臓器特異的自己免疫疾患と臓器非特異的(全身性)自己免疫疾患に大きく分けられます。
全身性の臓器非特異的自己免疫疾患にはⅢ型のアレルギー反応が関わっていると考えられています。
臓器特異的自己免疫疾患では、その臓器に特有の自己抗原が標的になっているとされ、主にⅡ型のアレルギー反応が関わっていると考えられています。

  • 臓器非特異的(全身性)自己免疫疾患
    膠原病/膠原病類縁疾患
  • 臓器特異的自己免疫疾患
    Ⅰ型糖尿病、橋本病(慢性甲状腺炎)/バセドウ病(甲状腺機能亢進症)、天疱瘡、重症筋無力症、多発性硬化症

免疫反応が支障をきたすケース

免疫反応の異常ということではないものの、治療等において免疫反応が問題となるケースもあります。

その一つは、移植における拒絶反応です。他人の臓器を移植する場合に拒絶反応が生ずると移植した臓器は生着しません。拒絶反応を抑えるには、多様なHLA(ヒト白血球抗原、主要組織適合遺伝子複合体MHCともいう)をできるだけ一致させる必要があります。
同様のことは、造血幹細胞移植においても起こります。

  • 宿主対移植片反応
    ドナー(臓器提供者)の臓器(移植片)がレシピエント(移植を受ける患者:宿主)の免疫系の攻撃を受ける。
  • 移植片対宿主病(GVHD)
    ドナーからの移植片に含まれるリンパ球がレシピエント(宿主)の細胞を攻撃する。

宿主対移植片反応は臓器移植で起こりやすい拒絶反応で、移植片対宿主病は主に造血幹細胞移植で問題になるものです。

赤血球の血液型の不適合による問題もあります。
ABO不適合輸血では、受血者の抗A抗体/抗B抗体が輸血中の赤血球に反応して溶血します。
Rh不適合妊娠(新生児溶血性黄疸)においては、Rh(-)の母親がRh(+)の子供を妊娠する際に抗D抗体(抗Rh抗体)が生じ、次にRh(+)の子供を妊娠すると胎児の赤血球を攻撃してしまいます。
いずれもⅡ型アレルギー反応が関与しています。

また、免疫が暴走することもあります。
サイトカインは様々な刺激によって免疫細胞などから産生されるタンパク質ですが、免疫反応の制御が利かず、サイトカインが大量に放出されて過剰な免疫反応が起きる状態がこれです。この状態をサイトカインストーム(免疫暴走)と言います。

免疫は重要な自己防御のメカニズムですので、それが正常に機能しないと不都合な訳です。

私たちの健康に大きな役割を担う医薬品、そして医療・ヘルスケア。
そうしたQOL(Quality Of Life)産業界全般にわたって、そのプロセスや情報を支えるITを介して、
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2022年07月11日
吉田 亜登美

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