免疫は人体に備わった自己防御の仕組みで、病気の予防や発症、そして治療にも関わっています。
免疫が正常でないことによって、病気や身体の異常に繋がることがあります。
今回は、免疫と病気の関係についてみてみましょう。
免疫不全というのは、免疫が上手く働かず、生体防御がきちんと機能しない状態です。
免疫不全は、先天的なものと後天的なものに分けられます。
原発性は多くなく、大部分は続発性です。続発性(後天性)免疫不全症の原因は、HIV感染症のような感染症、悪性腫瘍(がん)、自己免疫疾患、薬剤や放射線照射といった医療行為によるもの(医原性)や亜鉛欠乏症といったものまで様々です。
また、免疫不全によって、病原体への感染において、反復、難治性、重症化などが起こる易感染性が問題となります。腫瘍においても、免疫低下によって異常細胞の排除が低下して、悪性腫瘍が発生しやすくなるということもあります。
免疫不全による病気もあれば、病気が起因して免疫不全になるものもあるということです。
免疫制御が上手くいかず、免疫反応が過剰に起きてしまうことによる病気があります。
外来の物質に対するアレルギー疾患、自己由来の物質に対する自己免疫疾患が代表的なものです。
アレルギー反応というのは、免疫反応が過剰に起きて、生体を守るはずが生体を傷つけてしまうものです。
アレルギーにはその機序によって、大きく4つのタイプがあります。
狭義のアレルギー疾患というときは、Ⅰ型アレルギーを指します。
ⅠーⅢ型は液性免疫(抗体中心)、Ⅳ型は細胞性免疫(リンパ球中心)が関与します。
自己免疫疾患は、自己成分が抗原となって自己抗体を産生してしまい、過剰な免疫反応によって生体組織が傷害を受けるものです。臓器特異的自己免疫疾患と臓器非特異的(全身性)自己免疫疾患に大きく分けられます。
全身性の臓器非特異的自己免疫疾患にはⅢ型のアレルギー反応が関わっていると考えられています。
臓器特異的自己免疫疾患では、その臓器に特有の自己抗原が標的になっているとされ、主にⅡ型のアレルギー反応が関わっていると考えられています。
免疫反応の異常ということではないものの、治療等において免疫反応が問題となるケースもあります。
その一つは、移植における拒絶反応です。他人の臓器を移植する場合に拒絶反応が生ずると移植した臓器は生着しません。拒絶反応を抑えるには、多様なHLA(ヒト白血球抗原、主要組織適合遺伝子複合体MHCともいう)をできるだけ一致させる必要があります。
同様のことは、造血幹細胞移植においても起こります。
宿主対移植片反応は臓器移植で起こりやすい拒絶反応で、移植片対宿主病は主に造血幹細胞移植で問題になるものです。
赤血球の血液型の不適合による問題もあります。
ABO不適合輸血では、受血者の抗A抗体/抗B抗体が輸血中の赤血球に反応して溶血します。
Rh不適合妊娠(新生児溶血性黄疸)においては、Rh(-)の母親がRh(+)の子供を妊娠する際に抗D抗体(抗Rh抗体)が生じ、次にRh(+)の子供を妊娠すると胎児の赤血球を攻撃してしまいます。
いずれもⅡ型アレルギー反応が関与しています。
また、免疫が暴走することもあります。
サイトカインは様々な刺激によって免疫細胞などから産生されるタンパク質ですが、免疫反応の制御が利かず、サイトカインが大量に放出されて過剰な免疫反応が起きる状態がこれです。この状態をサイトカインストーム(免疫暴走)と言います。
免疫は重要な自己防御のメカニズムですので、それが正常に機能しないと不都合な訳です。
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2022年07月11日
吉田 亜登美