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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

続・免疫の話

「医薬」よもやまばなし

2022年06月10日

人体に備わった自己防御の仕組みである「免疫」。
免疫の仕組みとしてよく知られているのは、抗体が活躍する「抗原抗体反応」ですが、それだけではありません。実はいくつもの仕組みが備わっていて、総合的に機能しているのです。
前回は免疫の基本的な事項として、免疫反応や免疫系の構成因子・関連物質についてみてきました。今回は引き続いて、免疫のメカニズムについてみていくことにしましょう。

免疫のメカニズム

-ここは前回のおさらいです-

免疫には、先天的に備わっている「自然免疫」と、後天的に獲得する「獲得免疫」があります。
自然免疫は、一次防御として、異物を大まかに非自己と判断して即時的に排除する反応で、作用発現の早い、非特異的反応です。
一方、獲得免疫は自然免疫に引き続いて起こるもので、特定の抗原に対応して異物を排除する仕組みです。作用発現は遅いけれど、より精密で強力な特異的反応です。
自然免疫と獲得免疫は相互に協調・活性化し合うことで、免疫が機能しています。

自然免疫

自然免疫は生体が生まれながらにして保持している免疫機構で、異物に対して即時的・直接的に起こる非特異的な生体防御反応です。生体防御の最前線と言えます。
自然免疫は、体表面におけるバリア機構と、体内における主に炎症反応による異物排除機構の2段階で行われます。

自然免疫の第1段階は、体表面(外界に接している部分)における自然免疫で、異物の侵入を未然に防ぎます。
皮膚は最も強力な物理的バリアですし、粘膜(消化器・呼吸器・尿路系など)では粘液・分泌液による保護作用、酵素・胃酸などの殺菌作用、そして抗菌ペプチドの分泌があります。また、粘膜や皮膚に存在する常在細菌叢は、外来微生物の定着抑制の作用があります。
気道の線毛運動・咳・くしゃみ、消化管の蠕動運動などの生理的作用も異物排除に役立ちます。

自然免疫の第2段階は、生体内における自然免疫で、異物の感知等による炎症反応と異物の処理が行われます。
細菌などの微生物に対しては、まず樹状細胞等がそのパターン認識受容体(非自己のおおまかな区別)によって異物を感知してサイトカインを産生することで、炎症反応が開始されます。続いて、食細胞(好中球・マクロファージ)による貪食(異物の消化・分解)や殺菌が行われます。ここで補体は炎症促進及び貪食作用増強の働きをします。
ウイルスに対しては、感染細胞が炎症を起こし、NK細胞による感染細胞の非特異的破壊が起きます。また異常を感知した樹状細胞などが放出するインターフェロンによる抗ウイルス作用によって感染防御がなされます。

獲得免疫

獲得免疫は、自然免疫で異物を処理しきれなかった場合に、自然免疫に続いて起こる生体防御反応です。ここではリンパ球(B細胞、T細胞)が起点となります。 B細胞やT細胞は細胞表面に存在する抗原受容体を用いて、抗原を認識します。
自然免疫が先天的に備わったもので非特異的な反応なのに対し、獲得免疫は後天的に獲得するもので特定の抗原に対応して異物を排除する仕組みです。作用発現は遅いけれど、より精密で強力な特異的反応です。
非自己を記憶すること(免疫記憶)により、同じ抗原に対する2回目以降の反応はより早くより強くなります。

獲得免疫の特徴は以下です。

  • 多様性:リンパ球の抗原受容体には無数のレパートリーが存在
    ⇒どんな異物にも対応可能
  • 特異性:抗原受容体によって異物を厳密に認識したリンパ球のみが活性化・増殖して免疫反応に関与
    ⇒より精密な反応
  • 免疫記憶:一部のリンパ球がメモリー細胞となって同一の異物に備える
    ⇒認識した非自己を記憶
獲得免疫は、T細胞が中心となる「細胞性免疫」と、B細胞・抗体が中心となる「液性免疫」に大別されます。

細胞性免疫は、活性化マクロファージや細胞障害性T細胞等の免疫細胞によって行われる抗原特異的な免疫反応です。
ヘルパーT細胞が抗原を認識して活性化し、サイトカインを放出することで、マクロファージの活性化による貪食(異物の処理・排除)、細胞障害性(キラー)T細胞活性化による異常細胞の認識・破壊が行われます。

液性免疫は抗体(抗原特異的抗体)が中心となる抗原特異的な免疫反応です。
B細胞が抗原を認識し、B細胞から抗原提示されたヘルパーT細胞がサイトカインを放出するなどしてB細胞が活性化し、形質細胞へと分化・増殖します。形質細胞が抗体を産生し、貪食促進、中和作用を発揮します。
* 中和作用・・ウイルスや毒素分子の機能的な部分に結合して無力化する作用

細胞性免疫ではマクロファージやT細胞といった免疫細胞自体が攻撃するのに対し、液性免疫では抗体が攻撃を担います。

T細胞及びB細胞の一部は「メモリーT/B細胞(記憶細胞)」となり、同一抗原に対して増殖することで、速く強い免疫反応を示します。これが免疫記憶です。

能動免疫と受動免疫

抗原が侵入してきたことにより、生体内で抗体がつくられることによる免疫を能動免疫といいます。人為的に抗原を投与するワクチンもこれに該当します。

これに対して、抗体自体を投与することで一時的に生じる免疫を受動免疫といいます。母乳を介した新生児の抗体獲得や抗血清(ヒト・動物で産生された抗体を含む血清)などがあります。


免疫は自己防御の優れた仕組みですが、上手くコントロールできないと人体にとって不都合な事態となります。

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2022年6月10日
吉田 亜登美

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