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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

がんの診断と治療

「医薬」よもやまばなし

2022年03月10日

がんは治りにくい病気と思われがちですが、医療の進展によって生存率は上昇しています。早期発見・早期治療も重要なファクターです。
がんは遺伝子の異常によるとは言っても、発症する臓器によっても特徴があります。
今回は、個別のがんについては言及せず、「がん」という病気全般に関する診断と治療の概要について俯瞰してみましょう。

がんの検査と診断

がんを疑うような何らかの症状が出た場合や、健康診断で異常な所見が見つかるといった兆候が見られると、受診して診断を確定する必要があります。

がんの診断に用いられる主な検査方法としては以下が挙げられます。

  • 画像検査
    超音波やX線、磁気などの照射等により得られた画像から、腫瘍病変の存在確認、広がりや性質を調べる。レントゲン検査(X線)、CT検査(X線)、MRI(磁気共鳴画像)検査、PET検査(ポジトロン)、エコー検査(超音波)などがあり、早期発見や治療効果判定、再発の検索に用いられる。
  • 内視鏡検査
    レンズと光源が付いた細い管(内視鏡)の先端を体内に挿入することによって内部の映像を手元で見ることができる。
    病変の直接観察ができ、また病変の一部を採取(生検)して病理検査ができる。
  • 病理検査
    がんが疑われる病変から細胞や組織を採取し、病理医が顕微鏡で観察して、がんかどうか、がんの場合にはどのような種類・性質かを調べる。
  • 血液検査
    血液中に存在するがんそれぞれに特異的な物質を腫瘍マーカーとして測定することで、腫瘍の有無のスクリーニングや治療効果測定、治療後の再発の経過観察・予後観察等の指標に用いる。
  • 遺伝子検査
    がんの遺伝子情報に基づく治療のための、がん遺伝子の検査。
    がんの診断、治療薬の有効性及び安全性(副作用の有無)の判断に用いることで、最適な治療の選択に役立てる。

血液などの体液(液性検体)を用いて、これに含まれるがん細胞から生じた微量物質を検出する検査を「リキッドバイオプシー」と言います。これを解析することでがん細胞由来の遺伝子変異等の情報が得られます。患者さんの身体への負担が少ないこと(低侵襲)で繰り返し実施することが可能なこともあって注目されています。

がんの進行度合いは、「病期(ステージ)」として表されます。
病期は0またはⅠ~Ⅳ期に分類され、0/Ⅰ→Ⅳと進行がんになります。
病期は「TNM分類」といって、以下の3要素を組合せて決められます。

  • がんがどのくらいの大きさになっているか(T因子・・tumor)
  • 周辺のリンパ節に転移しているか(N因子・・node)
  • 別の臓器への転移はあるか(M因子・metastasis)
がんの種類(臓器等)によって、TNM分類の定義は異なりますが、ステージⅣでは遠隔転移があるなど、かなり進行したがんとなります。

検査は診断に用いられるだけでなく、治療法の選択や効果判定にも使われます。

「沈黙の臓器」という言葉があるように、かなり進行するまで自覚症状が出にくいがんもあるので、早期発見にはがん検診や健診での検査を受診するといったことが大事になります。

治療法の全体像

がんの治療法としては、「外科治療(手術)」「放射線治療」「薬物療法」が「3大治療法」と呼ばれます。(「免疫療法」を4番目の治療法とする考え方もあります)

  • 外科治療(手術)
    がんの病巣、浸潤や転移のある周辺組織やリンパ節を切除する。
    がんの塊を一気に取ることができ、微小転移(検出の難しい少数のがん細胞の転移)がなければ完治の可能性が高い。開腹・開胸手術は身体への負担は大きいが、腹腔鏡下手術や胸腔鏡下手術では負担は軽減される。
  • 放射線治療
    がんの病巣部に放射線を照射して、がん細胞を死滅させる。
    正常細胞に比べてがん細胞は放射線照射で死にやすいが、放射線感受性はがんの種類や状態によって異なる。
    局所進行がんで一つの照射野に収まる場合に用いる。
    X線以外に、粒子線(陽子線・重粒子線)の実用化も進んでいる。
  • 薬物治療
    外科治療・放射線治療といった局所療法で対応できないようながんへの全身療法。 各種の薬剤が開発されている。

がんに伴う疼痛や体調不良、精神的問題への対応として、QOL(Quality of Life)を維持するための「緩和ケア」もあります。
がんの状況によって治療法が選択されますが、単独でなく複数の治療法が併用されることも多く、「集学的治療」と呼ばれます。

これ以外にも、早期がんで可能となる場合のある「内視鏡治療」や、血液がんで用いられる「造血幹細胞移植」といった治療法もあります。

現時点では全てのがんを治すことは難しく、そのため、がんの進行度によって、がん治療の目的は変わります。
がん治療の目的は、「根治」「延命」「緩和」に分けられます。

  • 根治:がんを完全に消失させ、治癒させる
  • 延命(生存期間の延長):がんの増殖を一時的に抑制させる
  • 緩和:身体的・精神的苦痛を取り除く
がんが進行するに従って、治療目的は根治から延命、緩和へ変わっていきます。根治を目指すのであれば副作用を許容する治療に意味がありますが、根治が望めず延命を目的にする場合はQOLの比重が増します。

治療の選択肢は拡がっており、より適した治療の選択が可能となっています。
薬物療法の内容や免疫療法と言われるがんと免疫の関係については、またの機会に述べたいと思います。

◇ 標準治療と先進医療
「標準治療」は、科学的根拠に基づいた視点で、現在利用できる最良の治療であることが示されており、ある状態の一般的な患者への適用が推奨される治療です。現時点で確立された最善の治療法ということです。
「先進医療」は、厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた治療法ですが、保険給付対象の可否について、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要なものという位置付けです。
尚、有効性・安全性が確立されていない自由診療や民間療法も巷間にはあり、これは危険な選択です。

私たちの健康に大きな役割を担う医薬品、そして医療・ヘルスケア。
そうしたQOL(Quality Of Life)産業界全般にわたって、そのプロセスや情報を支えるITを介して、日立医薬情報ソリューションズは人々の健康・QOL向上に貢献していきます。


2022年03月10日
吉田 亜登美

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