がんは治りにくい病気と思われがちですが、医療の進展によって生存率は上昇しています。早期発見・早期治療も重要なファクターです。
がんは遺伝子の異常によるとは言っても、発症する臓器によっても特徴があります。
今回は、個別のがんについては言及せず、「がん」という病気全般に関する診断と治療の概要について俯瞰してみましょう。
がんを疑うような何らかの症状が出た場合や、健康診断で異常な所見が見つかるといった兆候が見られると、受診して診断を確定する必要があります。
がんの診断に用いられる主な検査方法としては以下が挙げられます。
血液などの体液(液性検体)を用いて、これに含まれるがん細胞から生じた微量物質を検出する検査を「リキッドバイオプシー」と言います。これを解析することでがん細胞由来の遺伝子変異等の情報が得られます。患者さんの身体への負担が少ないこと(低侵襲)で繰り返し実施することが可能なこともあって注目されています。
がんの進行度合いは、「病期(ステージ)」として表されます。
病期は0またはⅠ~Ⅳ期に分類され、0/Ⅰ→Ⅳと進行がんになります。
病期は「TNM分類」といって、以下の3要素を組合せて決められます。
検査は診断に用いられるだけでなく、治療法の選択や効果判定にも使われます。
「沈黙の臓器」という言葉があるように、かなり進行するまで自覚症状が出にくいがんもあるので、早期発見にはがん検診や健診での検査を受診するといったことが大事になります。
がんの治療法としては、「外科治療(手術)」「放射線治療」「薬物療法」が「3大治療法」と呼ばれます。(「免疫療法」を4番目の治療法とする考え方もあります)
がんに伴う疼痛や体調不良、精神的問題への対応として、QOL(Quality of Life)を維持するための「緩和ケア」もあります。
がんの状況によって治療法が選択されますが、単独でなく複数の治療法が併用されることも多く、「集学的治療」と呼ばれます。
これ以外にも、早期がんで可能となる場合のある「内視鏡治療」や、血液がんで用いられる「造血幹細胞移植」といった治療法もあります。
現時点では全てのがんを治すことは難しく、そのため、がんの進行度によって、がん治療の目的は変わります。
がん治療の目的は、「根治」「延命」「緩和」に分けられます。
治療の選択肢は拡がっており、より適した治療の選択が可能となっています。
薬物療法の内容や免疫療法と言われるがんと免疫の関係については、またの機会に述べたいと思います。
◇ 標準治療と先進医療
「標準治療」は、科学的根拠に基づいた視点で、現在利用できる最良の治療であることが示されており、ある状態の一般的な患者への適用が推奨される治療です。現時点で確立された最善の治療法ということです。
「先進医療」は、厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた治療法ですが、保険給付対象の可否について、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要なものという位置付けです。
尚、有効性・安全性が確立されていない自由診療や民間療法も巷間にはあり、これは危険な選択です。
私たちの健康に大きな役割を担う医薬品、そして医療・ヘルスケア。
そうしたQOL(Quality Of Life)産業界全般にわたって、そのプロセスや情報を支えるITを介して、日立医薬情報ソリューションズは人々の健康・QOL向上に貢献していきます。
2022年03月10日
吉田 亜登美