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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

血液型と遺伝子の話

「医薬」よもやまばなし

2021年10月08日

血液型にはいろいろな系統がありますが、血液型といえば、まずはA型/B型/AB型/O型というABO式血液型が思い浮かぶのではないかと思います。
この血液型は親から形質を受け継ぐ遺伝によって制御されています。
血液型を巡る遺伝子と遺伝の関係について、代表的なABO式血液型を中心にみてみましょう。

ABO式血液型

ABO式血液型は血液細胞の一種である赤血球に着目した分類法で、A型/B型/AB型/O型という表現型に分類されます。
このABO式血液型では、赤血球細胞膜の表面にある物質によって区別されます。
赤血球の表面を覆う赤血球細胞膜にはオリゴ糖鎖が存在しています。
血液型共通のオリゴ糖鎖に対して、A型ではN-アセチルガラクトサミン、B型ではガラクトースが結合しています。AB型ではそれぞれが結合した両方が存在しています。O型ではどちらも結合していません。

赤血球表面の糖鎖構造

A型に特有のN-アセチルガラクトサミンを付加させるのはN-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼという酵素です。同様にB型ではガラクトースを付加させるガラクトシルトランスフェラーゼという酵素が機能しています。

この酵素(糖転移酵素)を制御しているのは遺伝子です。
A型ではN-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(A型遺伝子)、B型ではガラクトシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(B型遺伝子)を持っています。B型遺伝子はA型遺伝子に変異が生じていて、その結果4アミノ酸が変化しています。O型では機能が欠損した遺伝子(O型遺伝子)になっています。
この遺伝子は9番染色体の同一部位にあります。つまり同一の遺伝子の塩基配列の僅かな違いが酵素(タンパク)の機能の差となって、血液型を決定づけているのです。

染色体は2本1対で、父親・母親から1本ずつ受け継ぎます。

2本で異なる遺伝子の場合、組合せによって表れる形質が決まっています。
A型遺伝子とO型遺伝子の組合せではA型、B型遺伝子とO型遺伝子の組合せではB型が表れます。
またA型遺伝子とB型遺伝子の組合せではAB型となります。

  • A型・・A型遺伝子 × A型遺伝子(AA型)、A型遺伝子 × O型遺伝子(AO型)
  • B型・・B型遺伝子 × B型遺伝子(BB型)、B型遺伝子 × O型遺伝子(BO型)
  • O型・・O型遺伝子 × O型遺伝子(OO型)
  • AB型・・A型遺伝子 × B型遺伝子(AB型)

血液型と遺伝

赤血球の表面の構造は「抗原」になります。
A型はA抗原、B型はB抗原、AB型はA抗原とB抗原を持ち、O型はA抗原・B抗原共に持っていません。
これに対して、血清(血液の液体部分)中には自分の身体にはない抗原に対する抗体(自分の血液型と違う血液型への抗体)があります。(赤血球の凝集を起こすので「凝集素」と呼ばれます)
A型では抗B抗体、B型では抗A抗体、O型は抗A抗体・抗B抗体の両方を持ち、AB型ではどちらも持っていません。
抗体は対応する特定の抗原を攻撃する役割を持っています。所謂、免疫の働きです。
A型の人は抗B抗体を持っているので、B型の赤血球(B抗原)が入ってくると攻撃してしまい、凝集を起こして塊ができます。
このことから、輸血の可能な組合せが決まります。但し、異なる血液型の全血(赤血球だけでなく血清も含む)輸血では、体内で凝集反応は起こりえます。ただレシピエント側では自分の血清が輸血された血清を薄めるので、大量輸血でなければ不都合は起きないとされます。
とはいえ、現在、臨床の現場では、異なる血液型の輸血(異型輸血)はほとんど行われておらず、基本的に同じ血液型同士で輸血を行います(同型輸血)。

血液型と輸血

尚、ABO式にも亜型があり、注意が必要です。

また、Rh式血液型(Rh+/Rh-)というのがあります。Rh抗原(D抗原)はアカゲザルの赤血球の抗原と共通する血液型抗原で、名前はアカゲザルの英名(Rhesus monkey)に由来しています。
Rh式の不適合はABO式ほど急激な症状は出ないようですが、不適合輸血の繰返しや複数回妊娠(Rh-の母体とRh+の胎児の不適合)では抗体産生による不具合が生じます。
Rh抗原の有無を決定するのも、遺伝子です。Rh血液型遺伝子は1番染色体にあります。

日本人の場合、ABO式血液型の頻度はおよそ、A型 40%、O型 30%、B型 20%、AB型 10%です。またRh式血液型では、Rh+ 99.5%、Rh- 0.5%となっています。 血液型の割合は、人種や民族によってかなり異なっています。

白血球の血液型

白血球の分類によるものとしてHLA(ヒト白血球抗原)があります。白血球の血液型として発見されましたが、その後、HLAはほぼすべての細胞にも存在することが解り、主要組織適合性複合体を指しています。
6番染色体にある多くの遺伝子によるもので、両親から受け継いだ2つの型が1対を形成します。
HLAは多くの抗原の組合せで構成されており、その型は多様です。HLAは細胞表面に発現し、免疫に関わります。
HLAのタイプが合わないものは異物と認識して攻撃するため、移植においてはHLA適合性が重要となります。




病気の罹りやすさや重症化率、予後等と、血液型との間に関連が示されているものがあります。抗体の差や血液凝固因子の多寡といったこととの関係が考えられていますが、更に研究が進めばそのメカニズムも明らかになってくるのではないでしょうか。

私たちの健康に大きな役割を担う医薬品、そして医療・ヘルスケア。
そうしたQOL(Quality Of Life)産業界全般にわたって、そのプロセスや情報を支えるITを介して、日立医薬情報ソリューションズは人々の健康・QOL向上に貢献していきます。


2021年10月08日
吉田 亜登美

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