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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

頭の痛い話

「医薬」よもやまばなし

2021年06月10日

頭痛はごくありふれた疾患で、多くの人が経験したことがあるでしょう。
外見では分かりづらく、その痛みが理解されづらいところもあるでしょうが、本人にとっては辛いものです。
原因も症状も種々ある頭痛、今回はこれを取り上げてみましょう。

一次性頭痛と二次性頭痛

二次性頭痛とは、何らかの病変があり、これにより引き起こされる頭痛です。命に関わる病気が隠れていることがあり、まずは原因疾患の有無と特定を診断することが重要です。 二次性頭痛では、原因疾患の治療が先決です。

頭痛の発生が病変に起因しない頭痛を一次性頭痛といいます。
一次性頭痛の主なものは、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3つです。

二次性頭痛

頭痛を引き起こしている何等かの病気がないかを見極め、あればその特定と治療に進みます。
二次性頭痛の原因となる疾患としては、以下のようなものがあります。

  • 頭部外傷・・切創、皮下血腫、骨折、むち打ち損傷、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、慢性硬膜下血腫
  • 血管障害・・くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞、側頭動脈炎
  • その他の頭蓋内疾患・・脳腫瘍、水頭症、低髄液圧、てんかん
  • 物質摂取または中止・・グルタミン酸、アルコール、カフェイン離脱、亜硝酸塩、薬物乱用(鎮痛薬、トリプタン系薬、エルゴタミンなど)、一酸化炭素中毒
  • 感染症・・髄膜炎、脳炎、脳膿瘍、かぜ症候群、インフルエンザ
  • 恒常性障害・・高血圧脳症、低酸素(睡眠時無呼吸症候群、高山病)、低血糖、透析
  • 顔面・頭蓋骨の疾患・・急性緑内障発作、屈折異常、副鼻腔炎、中耳炎など耳疾患、顎関節症
  • 精神疾患・・うつ病、神経症

一次性頭痛

一次性頭痛には多くの種類がありますが、主なものは片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3種です。

片頭痛は、前頭部・側頭部に脈拍と一致した拍動性の痛みがあり、中等度~重度と痛みがひどく、日常生活に支障をきたすことの多い病気です。疲労感や欠伸、首・肩の凝り、光や音に過敏になるといった前駆症状があったり、直前に閃輝暗点(視野の中心が見えにくくなり、その周囲にきらきらと輝く歯車のようなギザギザの模様が見え、次第に視野全体に広がっていく症状)などの前兆が現れることがあります。発作は12~24時間程度持続します。また光・音・臭いに対する過敏や悪心・嘔吐といった随伴症状を示します。
有病率は10%以下ですが、好発年齢は20~40歳代で女性に多く発症します。
機序は明らかではないのですが、脳血管を取り巻く三叉神経の興奮や脳血管の拡張が関わっていると考えられています。
誘因としては、ストレス(解放時の発症もある)や疲労、睡眠不足・過多、月経周期、天候や温度・気圧の変化、低血糖や飲酒といったものが挙げられます。
入浴やマッサージ、アルコール等によって血管が拡張すると痛みが増悪し、安静や適度な睡眠といったことにより血管が収縮することで痛みが軽減します。

緊張型頭痛は、主に後頭部周辺の筋緊張によって生じる非拍動性の頭痛で、頭を締め付けられるような痛みや圧迫感があります。一次性頭痛の中で最も多く、生涯有病率は30%以上と極めて高いと言われています。
誘因としては、精神的・身体的ストレスや不安・うつ状態、運動不足やうつむき姿勢の継続、眼精疲労、また華奢な頸やなで肩、顎関節異常などの身体構造、あるいは気温の低下といったことが挙げられます。
これらの誘因により、頭部を支える項部(首の後ろ)から後頭部の筋肉の緊張(凝り)を生じ、頭痛を引き起こします。
片頭痛とは逆に、血管の拡張により症状が緩和します。

群発頭痛は、片側の眼窩部から側頭部がえぐられるような激痛発作を生じる頭痛です。有病率は低いですが、20~40歳代の男性に多く発症します。発作の持続は1~2時間程度で深夜に起こりやすいのですが、これはレム睡眠に関係しているためと言われています。
飲酒や喫煙、ヒスタミンやニトログリセリンといった薬剤が誘因となります。

尚、慢性片頭痛では緊張型頭痛の症状も併せ持つという混合型になっていることも多いようです。

治療

頭痛という症状だと手近な鎮痛剤・・と考える方も多いかもしれません。
治療を行うには、対象となる頭痛をきちんと見極める必要があります。
二次性頭痛であれば原因疾患の治療にあたる必要があります。
また、一次性頭痛でも症状によってどのタイプの頭痛なのかを特定して、それに合った対処が必要です。

片頭痛では、症状が起きたら、安静と薬物治療が中心になります。
片頭痛は妊娠可能な若い女性に好発するのですが、妊娠時には使用できない薬剤も多いので注意を要します。
症状が軽い場合は鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬やアセトアミノフェン)の単剤投与が第一選択になります。これで効果のない場合や中等度~重度の頭痛の場合にはトリプタン製剤、それが無効な場合には限定的にエルゴタミン製剤が使用されます。トリプタン製剤は血管収縮作用と三叉神経鎮静化作用、エルゴタミン製剤は血管収縮作用を示し、これにより片頭痛を改善します(有効性・安全性面ではトリプタン製剤の方が優れています)。悪心・嘔吐が強い場合は制吐薬が併用されます。
発作の頻度が高かったり、発作時の治療薬が充分でない場合には、予防療法が検討されます。予防薬としては抗てんかん薬や抗うつ薬、循環器用薬のβ遮断薬やCa拮抗薬が用いられます。また片頭痛に関与していると考えられている血管作動性物質を阻害する抗CGRP抗体という薬剤が新たに承認されてきています。

緊張型頭痛では、頭痛の誘因となる精神的・身体的ストレスの除去が最優先になります。血行を良くすることで改善します。痛みを抑えるには鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬やアセトアミノフェン)が用いられますが、頻発するようであれば、連続服用は頭痛を悪化させることになるので、予防薬として抗うつ薬が用いられます。(筋弛緩作用を持つマイナートランキライザー等が用いられることもありますが、最近では抗うつ薬の方がよいとされているようです)

このように薬物療法には鎮痛薬以外の薬剤も使用されます。

◇ こぼれ話:薬剤の使用過多による頭痛
二次性頭痛の一つに、「薬剤の使用過多による頭痛」というのがあります。これは頭痛の治療薬を過剰に使用することで引き起こされる頭痛です。
頭痛の発作が頻繁に起こる場合に、都度服用することで薬が効かなくなって頭痛が慢性化し、それでも更に服用して悪化するという悪循環になる訳です。
この「薬剤の使用過多による頭痛」が起きた場合は、原因となった薬剤の服用を中止し、他の薬剤に変えたり、予防薬の適応が可能であれば予防薬を使用することになります。

私たちの健康に大きな役割を担う医薬品、そして医療・ヘルスケア。
そうしたQOL(Quality Of Life)産業界全般にわたって、そのプロセスや情報を支えるITを介して、日立医薬情報ソリューションズは人々の健康・QOL向上に貢献していきます。


2021年06月10日
吉田 亜登美

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