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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

薬局と薬剤師

「医薬」よもやまばなし

2021年01月08日

治療の手段としては、手術や放射線治療、あるいはカウンセリングといった方法もありますが、最も一般的なものは薬物治療でしょう。
治療の決定は医師ですが、この医療用医薬品を扱う場所は主に薬局、掌るのは薬剤師です。
今回は、医療用医薬品を扱う薬局と薬剤師についてみていくことにしましょう。

薬局

薬局は、医療用医薬品に関しては薬剤師が調剤業務を行い、患者さんに必要な情報とともに薬を渡す所です。
病院・診療所内にある薬局は医療法で「調剤所」として定義されているものです(特例で「薬局」と呼んでいいことになっています)。
病院・診療所内ではない市中の薬局を開設するには、所在地の都道府県知事(もしくは場合によって市長・区長)の許可が必要です。
許可要件としては、調剤室や必要な器具の整備といった構造設備、薬剤師の人数などの販売体制といったものがあります。

薬剤師

医療の中で、「薬のプロ」の役割を担うのが、薬剤師です。
患者さんに投薬をする場合、「医師が処方箋を患者に交付」し、「薬剤師がその処方箋に従って調剤」することになります。
調剤というのは、処方箋に従って医薬品を取り揃え、必要によって、剤形を変えたり(カプセル剤、シロップ、軟膏にする)、複数の薬を配合(粉薬を混ぜ合わせる)したり一包化(1回分ずつ包装する)といったことをして、患者さんに薬を渡せるようにすることです。
投薬に対しては、処方箋を介して医師と薬剤師が関わります。薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師、薬剤師という専門家が分担することを「医薬分業」といいます。医薬分業の目的は主に以下の点です。

  • 処方箋による医師の処方内容の情報開示
  • 医師と薬剤師による処方のダブルチェックによる安全確保
  • 医師の利益(薬価差益など)による処方の公正性欠如の回避

処方のダブルチェックという点では、薬剤師は処方箋の内容を確認し、処方内容に疑義が生じた場合は発行した医師に問い合わせる「疑義照会」をすることが義務付けられています。
処方によっては、ジェネリック医薬品の適用可否や選択といったこともあります。
処方内容の適正性を判断するためには、医薬品に関する情報に精通していなくてはなりません。新たに承認されて市販される新薬もありますし、既存薬であっても効能効果等の追加がなされたり、新たに安全性情報や使用上の注意等が発出されることもあります。こうした医薬品情報の収集・理解に常に努めることが求められます。
また患者・家族などに対して薬剤の適正な使用のために必要な情報の提供、服薬指導を実施しなければなりません。

薬剤師が調剤を行う場としては、主に病院・診療所内(病院薬剤師と呼ばれます)と薬局があります。

薬局・薬剤師の役割の変化

いま、薬局・薬剤師の役割において変化の中にあると言われます。
従来は、処方箋に対する薬を中心に見て、適切に患者さんへ薬が渡ることに主眼がありました。これに加えて、患者さんを中心に置いた担う業務があります。これは「対物業務」から「対人業務」へのシフトと言われます。

その一つは、2015年に厚生労働省から出された「患者のための薬局ビジョン」にある「かかりつけ薬剤師・薬局」です。個々の処方箋が交付された病院に近い門前薬局で個々に薬を購入するのではなく、特定の薬局(かかりつけ薬局)で購入するようにするというものです。
その目的の一つは、患者さんの服薬情報の一元的・継続的管理です(「おくすり手帳」というのがありますが効果は限定的とみられているということです)。いまどういう薬が処方されているか、これまでどんな薬を服用してきたか(薬歴管理)が把握できることによって、多剤・重複投与や残薬の問題の解消や処方内容の最適化に繋がることが期待されます。これに関しては複数受診によるポリファーマシーということも含めて、1枚の処方箋だけ見てもわからない情報です。
また「24時間対応・在宅対応」という目的も挙げられています。在宅医療・在宅介護において、薬剤の提供・管理、服薬指導や相談対応といったことへの対応です。高齢化とも相まってニーズは増加することが想定されます。

2020年施行の医薬品医療機器等法の改正では、調剤時のみならず、薬剤の服用期間を通じて継続的かつ的確に服薬状況を把握して薬学的知見に基づく指導を行う義務(残薬の一因である服薬の中止・中断の防止にも繋がります)、医療機関へのフィードバックの努力義務が追加されています。

こうしたことは、薬局が単に薬を渡す場ということではなく、患者さんの継続的な健康サポート拠点になるということを意味します。

◇ こぼれ話
無診療で治療を受けることはできませんが、オンライン診療(遠隔診療)に関しては規制緩和の流れがあります。
無診療で薬だけ処方することはできませんが、オンライン診療の潮流と同様に、電子処方箋、薬の配送、オンライン服薬指導といったことが可能になってきています。

私たちの健康に大きな役割を担う医薬品、そして医療・ヘルスケア。
そうしたQOL(Quality Of Life)産業界全般にわたって、そのプロセスや情報を支えるITを介して、日立医薬情報ソリューションズは人々の健康・QOL向上に貢献していきます。


2021年01月08日
吉田 亜登美

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