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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

診療科と専門医

「医薬」よもやまばなし

2020年12月10日

具合が悪くて治療を受ける場合に医療機関の選択に迷うことはないでしょうか。医療機関には診療科目が掲げられていますが、意外に多様に感じられるかもしれません。
今回はこの標榜診療科目と専門性についてみてみましょう。

診療科目

近代医学では、まず内科、そして外科、産科の歴史が古いとされますが、医学の進歩に従って専門分化してきた経緯があります。対象とする器官系(呼吸器・循環器・消化器)や臓器・部位(眼・耳鼻咽喉・皮膚・心臓・脳神経など)あるいは用いられる技術(放射線・麻酔・リハビリテーションなど)、それに年齢(小児)や性別などが区分としてでてきています。

医療機関が標榜できる診療科目は医療法で定められています。といっても、あまり単純ではないのですが、簡単に見てみましょう。
まず、基本的に認められる科目として、以下があります。
•内科 •外科 •精神科 •アレルギー科 •リウマチ科 •小児科 •皮膚科 •泌尿器科
•産婦人科(産科、婦人科)
•眼科 •耳鼻いんこう科(耳鼻咽喉科) •リハビリテーション科
•放射線科(放射線診断科、放射線治療科) •病理診断科 •臨床検査科 •救急科
これらに対して、以下を組み合わせることができます。

  1. 部位、器官、臓器、組織又はこれらの果たす機能
    頭頸部、頭部、頸部、胸部、腹部、呼吸器、気管食道、気管、気管支、肺、消化器、食道、胃腸、十二指腸、小腸、大腸、循環器、肛門、血管、心臓血管、心臓、腎臓、脳神経、脳、神経、血液、乳腺、内分泌、代謝、脂質代謝、肝臓、胆のう、膵臓
  2. 疾病、病態の名称
    感染症、性感染症、腫瘍、がん、糖尿病、アレルギー疾患
  3. 患者の特性
    男性、女性、小児、周産期、新生児、児童、思春期、老人、老年、高齢者
  4. 医学的処置(診療方法)
    整形(内科との組合せは不可)、形成(内科との組合せは不可)、美容、心療(外科との組合せは不可)、薬物療法、移植、光学医療、生殖医療、不妊治療、疼痛緩和、緩和ケア、ペインクリニック、漢方、化学療法、人工透析、臓器移植、骨髄移植、内視鏡
組合せにおいては、a,b,c,dのうち同じ分類に属する事項でなければ、複数の組合せも可能です。当然ですが、不合理な組合せとなるものは認められません。
これら以外に、麻酔科があります。
現在定められているものは2008年の見直しを受けたものです。それ以前から標榜している科目は継続使用できる経過措置があるので、上記に該当しないものを見かける可能性はあります。

専門医制度

医療技術の専門分化に伴って診療科目も細分化した表記が認められている訳ですが、これと医師の専門性は関係しているのでしょうか。
現在の日本の医療制度では自由標榜制なので、医師はその専門に関わらずどの診療科目も標榜することができてしまいます。唯一、麻酔科は厚生労働大臣の許可を受けた医師に限り認められる診療科名となっています。
では、各医師の専門性は何によってわかるでしょうか。
そこには、ある分野の高度な知識・技術を修得してその専門性やスキルを証明する専門医制度というのがあります。

臨床医は医師国家試験に合格したのち、2年間の臨床研修が義務付けられています。ここで、一般的な診療において適切に対応できる基本的な診療能力を習得します。その後、特定の専門領域へ進みます。
従来の専門医制度というのは学会認定専門医と呼ばれ、各医学会(日本内科学会や日本外科学会等)が独自に設定したものであり、基準も統一されておらず、また種々の名称の資格が派生した状況にありました。
2018年にスタートした新専門医制度では、第三者機関である「日本専門医機構」が運用することになっています。この制度では、19の基本領域の診療科と29のサブスペシャリティ領域の診療科で構成されています。
[19の基本領域]
総合内科・外科・耳鼻咽喉科・麻酔科・形成外科・小児科・整形外科・泌尿器科・病理・リハビリテーション科・皮膚科・産婦人科・脳神経外科・臨床検査・精神科・眼科・放射線科・救急科・総合診療科
[29のサブスペシャリティ領域](*変更になることがあります)
消化器・腎臓・消化器外科・小児神経・放射線治療・循環器・肝臓・呼吸器外科・小児血液・放射線診断・呼吸器・アレルギー・心臓血管外科・がん・手外科・血液・感染症・小児外科・周産期・脊椎脊髄外科・内分泌代謝・老年病・リウマチ・婦人科腫瘍・集中治療・糖尿病・神経内科・小児循環器・生殖医療
基本領域専門医取得のための研修は3年以上、基本領域の専門医を取得したうえでサブスペシャリティ領域専門医を取得するという構造になっています。
専門医資格によって、どういう専門領域を修めたかがわかることになるという訳です。

◇ こぼれ話
専門治療を可能とする診療科・専門医がいても、患者が最初から分類されている訳では必ずしもありません。
患者の症状や状況から必要な検査をすることによって臓器・病気を絞り込んでいき、診断を付けることがまず必要です。これを受けて治療が可能になります。
つまり、的確な診断を下し、一般的な病気(疾患・症状)であればその場で治療を施し、より専門的な治療を要する場合には専門医を紹介して治療を引き継ぐというプライマリケアを担う役割が必要です。
通常であれば、医師は臨床研修でプライマリケアの基礎を習得することになっており、所謂「かかりつけ医」がこの機能を担ってくれることが期待されます。

一方で、なかなか診断の難しい症例というのもあります。また細かく専門の分かれた診療科を有する病院で、初診の患者さんに診断を付けるという必要もあります。
新専門医制度の基本領域には一般的な診療科名が並んでいますが、19番目に総合診療科というのがあります。ここで認定される総合診療専門医は、まさにこの診断の難しい症例に診断を下すことが期待されています。
ちなみに、総合診療科(あるいは総合診療部)は大学病院や大病院に設置されてきていますが、標榜診療科目にはなっていません。

私たちの健康に大きな役割を担う医薬品、そして医療・ヘルスケア。
そうしたQOL(Quality Of Life)産業界全般にわたって、そのプロセスや情報を支えるITを介して、日立医薬情報ソリューションズは人々の健康・QOL向上に貢献していきます。


2020年12月10日
吉田 亜登美

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