ページの本文へ

Hitachi
お問い合わせお問い合わせ

株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

医薬品の承認制度

「医薬」よもやまばなし

2020年09月10日

医薬品の製造販売には品目ごとに承認を受けることが必要です。医薬品を実際に市場に出していくためには、それまでの研究開発の成果をもとに有効性・安全性・品質について確認・審査されて承認を受ける必要があるのです。
医薬品は生命に関わるものですからその承認には慎重にならざるを得ませんが、その承認審査には時間を要することによるドラッグ・ラグ等の問題もあるのが現状です。
有効性・安全性を確保したうえで、より迅速に医薬品を使用できるようにする制度整備も進んできています。
今回は医薬品を市場に送り出すための承認制度について、その概要をみてみましょう。

医薬品の製造販売承認制度

医薬品を製造販売するには、医薬品として製造販売(発売)しようとする者(製造販売業の許可を受けた製造販売業者)が、医薬品の品目ごとに製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければなりません。

研究開発の過程で得られた研究開発の成果を申請資料として纏め、製造販売の承認取得のための申請をします。承認権限は厚生労働省にありますが、審査の実務は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が担います。
審査の過程では、申請内容に関する当局とのやりとりがあります。追加のデータの提出を求められることもありますし、場合によっては追加の試験が必要になることもあります。
PMDAでの審査が終了すると、審査結果を厚生労働省に報告します。
報告を受けた厚生労働省は薬事・食品衛生審議会に諮問し、この結果を受けて承認します。
承認されると、薬価収載された後に発売となります。
承認に期限はなく、承認取得者が承認整理届出を行うか、承認権限者が承認を取り消さない限り有効です。

承認を申請すると、申請された薬物の「名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、副作用、その他品質、有効性、安全性に関する事項」が審査されます。
承認申請書に添付すべき資料は、基本的に以下のものです。

  • 起源または発見の経緯及び外国における使用状況等に関する資料
  • 製造方法並びに規格及び試験方法等に関する資料
  • 安定性に関する資料
  • 薬理作用に関する資料
  • 吸収、分布、代謝、排泄に関する資料
  • 安全性・毒性に関する資料
  • 臨床試験の試験成績に関する資料
  • 製造販売の承認の要件は以下の通りです。

    • 承認申請者が製造販売業の許可を得ていること。製造販売承認を取得するものは製造販売業者。
    • 申請品目を製造する製造所が医薬品製造業の許可を得ていること。
    • 申請品目の名称、成分、分量、用法用量、効能効果等が適切であること。
    • 承認申請資料の収集・作成の方法が、試験等の薬事規制(GLPやGCP、信頼性の基準等)に適合していること。
    • 申請する医薬品が製造における薬事規制(GMP)の適用対象であるとき、その製造管理及び品質管理の方法がGMPに適合していること。

    有効成分が同じでも、承認を受けている事項を変更する場合には厚生労働大臣の承認を受けなければなりません。有効成分以外の成分・分量、用法・用量、効能・効果、製造所や製造工程、規格や試験方法等は、承認の一部変更になります。その場合、変更対象に相当する資料が申請に必要となります。
    尚、有効成分やその分量、剤形等を変更する場合には、新たな品目として製造販売承認を得ることが必要となります。
    表示、保管、試験検査施設の変更、製造所の名称変更等といった軽微な変更の場合は、一部変更承認申請に代えて承認事項軽微変更届出を提出します。

    条件付承認制度

    有効性・安全性の検証には、多くの患者を対象とした治験が必要とされていますが、患者数が少ない等の理由で検証的な臨床試験の実施が困難あるいは多くの時間を要するケースがあります。こうしたケースで、当該治療が早期に期待される場合の制度として条件付承認制度が設けられました。
    本制度では、重篤な疾患であって有効な治療法に乏しく医療上の有用性が高い医薬品を早期に実用化することを目的としており、承認後の使用成績調査、適正使用措置の実施等を条件として、検証的試験の試験成績を求めることなく承認を行うこととし、優先審査の対象となります。

    希少疾病用医薬品指定

    希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)とは、稀にしか起こらない疾病のための医薬品のことです。
    希少疾病用医薬品指定というのは、患者数が少ないことにより国内では十分にその研究開発が進んでいない状況を踏まえ、安全かつ良質な医薬品を一日も早く医療の現場に提供することを目的に、開発を支援・促進する制度です。(市場性が小さく利益がほとんど期待できない、患者が少ないために試験に長い期間と多くの研究費がかかる等、採算が合わないという理由で開発に取り組まれないという実情に対応するものです)

    先駆的医薬品指定

    海外では承認されていても国内では承認されていない未承認薬・適応外薬、すなわちドラッグラグが問題視され、承認審査の迅速化といった施策によりその解消に動いていますが、一方で、患者に最先端の治療薬を世界に先駆けて提供することを目指すための制度が設けられています。
    世界に先駆けて我が国で開発され、原則として既承認薬(外国を含めて)と異なる作用機序により、生命に重大な影響がある重篤な疾患等に対して極めて高い有効性が期待される医薬品を指定します。優先審査の適用等により、審査期間を6ヶ月まで短縮することを目指しています。

    特定用途医薬品指定

    本制度は医療上のニーズが充足されていない用途の解消を目的とするもので、優先審査の対象となります。後回しになりがちな小児適用や薬剤耐性菌感染症対応等があります。
    医療上のニーズが著しく充足されていないこと、承認された場合に特に優れた使用価値を有することが条件になります。

    緊急的な特例承認

    特例承認とは、生命や健康に重大な影響を与えるおそれのある疾病や感染症が発生した場合に、外国で承認された医薬品を一刻も早く国内で使用できるようにするための特例的な承認規定です。
    承認申請に必要な資料を大幅に省略することが認められ、GxP基準への適合確認の省略など、審査手続きが簡素化されます。また承認申請から承認まで短期間で対応されます。 特例承認が認められる医薬品とは以下の要件を満たすものです。

    • 国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病など緊急に使用されることが必要な医薬品で、その医薬品以外に適当な治療方法がないこと。
    • その用途に関し、承認審査制度が日本と同等の水準の審査体制があると認められる国で製造・販売が認められているものであること。

    ◇ こぼれ話
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として、2020年5月に特例承認された「レムデシビル(製品名:ベクルリー)」。米国で承認されたことを受けて、異例な速さで承認されました。
    この時点で、米国においては正式承認ではなく緊急使用許可(EUA)だったのですが、日本では承認条件はあるものの正式承認となり、世界で初めてレムデシビルをが正式に承認されたことになりました。
    ちなみに、米国での正式承認に向けて、開発したギリアド・サイエンシズ社は2020年8月にFDAに対して新薬承認申請を行っています。

    一方で、アビガン(一般名:ファビピラビル)は日本でのみインフルエンザ治療薬として承認されています。適応外使用は可能ですが、早期に当該適応の正式承認を得るには「条件付き承認制度」の適用が考えられます。この場合、検証的臨床試験は猶予されますが一定の有効性・安全性を確認するための臨床試験は必要です。観察研究では代替できないので、承認には治験が必要なのです。

    私たちの健康に大きな役割を担う医薬品、そして医療・ヘルスケア。
    そうしたQOL(Quality Of Life)産業界全般にわたって、そのプロセスや情報を支えるITを介して、日立医薬情報ソリューションズは人々の健康・QOL向上に貢献していきます。


    2020年09月10日
    吉田 亜登美

Contact Us