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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

後発医薬品

「医薬」よもやまばなし

2020年02月14日

先発医薬品(新薬)は既に市場に出ている医薬品とは異なる新規性のある医薬品ですが、一定期間を過ぎると、後発医薬品の参入が可能になります。今回は、この後発医薬品について見てみましょう。

先発医薬品と後発医薬品

先発医薬品、いわゆる新薬は「すでに製造販売の承認を与えられている医薬品とは有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が明らかに異なる医薬品」と定義されます。今までにない新しい薬ということですね。
これに対して、後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品は「既承認医薬品(先発医薬品)と有効成分、投与経路、含量、用法・用量が同一で、効能・効果が同等な医薬品」を指します。つまり既に世の中にある薬と基本的には同じものということです。次の3要件を満たすものが後発医薬品として承認されます。

  • 対応する先発医薬品について、有効成分の物質特許、用途特許の存続期間が満了したもの(特許が切れることで発明者の権利独占がなくなったということ)
  • 対応する先発医薬品について、その再審査期間が終了し、効能・効果の再評価中でないもの(医薬品としての評価が確立されたということ)
  • 治療効果が同等であると認められるもの

新薬は特許や再審査制度等により先発権(後発医薬品が承認されない期間)がありますが、一定期間が経過すると後発医薬品が出てくるという訳です。

新薬における研究開発は、目的の効果を発揮する物質を探してその有効性等を確立していくプロセスですが、その成功確率は低く、また費用・期間といった負荷が大きいのが特徴です。それに対して、後発医薬品では答えがわかっている状態での開発になるため、研究開発費および開発期間が大幅に縮小されます。
このことから、先発医薬品に比べて薬価が低く抑えられており、安価となります。

複数の医薬品メーカーが後発医薬品を出すことも珍しくはありませんが、個々の後発医薬品が全て、先発医薬品が承認取得した全ての効能・効果を対象にしているとは限りません。後発医薬品の中でも対象とする効能・効果が異なることもあります。また、先発医薬品が有していない剤形も開発することができます。

通常の後発医薬品(ジェネリック医薬品)においては、新薬と全く同一のモノという訳ではない(有効成分は同一だが添加剤や製造方法が異なるなど、同等であって同一ではない)という点に留意が必要です。

後発医薬品の研究開発

前述の通り、新薬の研究開発が多くの試験を必要とするのに対し、後発医薬品では通常、先発医薬品との生物学的同等性を示すデータと品質に関する試験データ(製剤の品質を保証する「規格及び試験方法」「安定性試験」)が要求されるのみです。
有効成分の含量が同じだからといって、生体内での有効性が同じとは限りません。そこで有効成分の薬物血中濃度(経時変化)が同等であれば、有効成分による有効性・安全性は同等とみなします。そのための試験が生物学的同等性試験です。このことから、先発医薬品と「同一」ではなく、「同等」であるといいます。

オーソライズド・ジェネリック

通常の後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、先発医薬品と同一の有効成分を同一量含有している医薬品ですが、通常、添加物、製法、効能・効果、用法・用量が全く同一とは限りません。
これに対し、オーソライズド・ジェネリックと呼ばれるものは、先発医薬品の製造販売業者から許諾を得て製造するもので、原薬・添加物、製法等が先発医薬品と同一です。また、特許使用の許可を得ているため、再審査期間が終了していれば特許期間が終了していなくても製造販売することができます。

ジェネリック医薬品の意味

後発医薬品に対する「ジェネリック」という呼称はかなり定着したように見受けられます。
後発医薬品がジェネリック医薬品と呼ばれるのは、欧米で一般名(generic name, 成分名)で処方されることが多かったことに由来しています。
従来は独自の販売名(製品名)が使われていましたが、医療事故防止の観点から、現在では(2005年の通知により)「有効成分に係る一般的名称に剤形・含量・会社名等を付加した名称」が販売名として使用されます。
例えばキノロン系抗菌薬であるレボフロキサシン(一般名)500mg錠の場合、販売名は以下のようになります。

  • 新薬:クラビット錠500mg(メーカー名は入らない)
  • ジェネリック:レボフロキサシン錠500mg「○○」(○○:トーワ、サワイ、明治 等新薬メーカー以外の会社名)
  • オーソライズド・ジェネリック:レボフロキサシン錠500mg「DSEP」(DSEPは新薬メーカーから許可された会社名、この場合は新薬メーカーのグループ会社)

バイオ医薬品における後続/後発医薬品

化学合成の医薬品における後発医薬品では、先発医薬品の有効成分と同一です。
これに対して、バイオ医薬品の場合は、製造法により有効成分には不均一性があり、同一性を示すことは難しく、同等/同質とされます。同等/同質というのは、品質特性として類似性が高く、品質に何らかの差異があっても安全性・有効性に影響を及ぼさないことをいいます(全く同一であるということを意味しません)。
先行バイオ医薬品との同等性/同質性は、品質・非臨床・臨床での比較試験により評価されます。
臨床試験においては後発医薬品が生物学的同等性試験のみであるのに対し、バイオ医薬品では血中濃度推移以外に薬理作用・有効性・安全性の比較が必要です。
通常のジェネリック医薬品に比べると、承認申請に必要な試験は多く設定されています。また原則として製造販売後調査が実施されます。

バイオ医薬品の有効成分は同一ではなく同等/同質であるということから、類似品ということを意味する「バイオ後続品(バイオシミラー)」と呼びます。
製品名にはバイオシミラーであることを示す「BS」が入ります。

先行バイオ医薬品と同一の後続品、つまりオーソライズド・ジェネリックに相当するもの(バイオ版オーソライズド・ジェネリック医薬品)は「バイオセイム」と呼びます。
これは先行品と同じ製造であり、同一とみなされます。そのため、類似品であるバイオシミラーと区別して「バイオセイム」と呼ばれ、製品名にバイオシミラーであることを示す「BS」がありません。後続品でなく、後発品と同じ扱いとなります。

後発医薬品の使用促進

安価であることから、患者負担の軽減や医療保険財政の改善に資するものとして、政策として後発医薬品の普及を図っています。
使用割合として、2009年には30%台だったのが2018年時点では72%であり、2020年9月までに80%以上(数量ベース)を目標としています。

私たちの健康に大きな役割を担う医薬品。
その萌芽・誕生から退役までのライフサイクルにおけるプロセスや情報は厳しく重要なものです。そうした製薬のプロセスや情報を支えるITを介して、日立医薬情報ソリューションズは人々の健康に貢献していきます。



2020年02月14日
吉田 亜登美

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