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株式会社日立医薬情報ソリューションズ

Column

薬の基本

「医薬」よもやまばなし

2019年07月02日

経験的に有用な自然界のものを薬として使用するようになってから、いくつかの変遷を辿って、今では多様な薬が使われるようになっています。今日の医療において、医薬品は重要な位置付けにあります。
では、基本に立ち返って「薬とは何か」ということを簡単にみてみましょう。

医薬品の特性

医薬品は、主に人の疾病の治療に使用される生命と密接に関係する物質です。
用途としては、以下が挙げられます。

  • 病気を根本的に(原因となるものに作用して)治療する・・原因療法
  • 病気による症状を軽減する・・対症療法
  • 薬物治療以外の治療を補助する(手術時の麻酔・免疫抑制・感染防御等)
  • 病気の発症を防いだり、発症時の症状を軽減する・・予防療法
  • 生体機能に必要な物質(ホルモンやビタミン、ミネラル等)を補う・・補充療法
  • 病気を診断する

医薬品は非常に有用なものですが、一方で生体にとっては異物であるため望ましくない作用が生じることもあります。その点ではリスクとベネフィットが常に存在します。
また生体に直接作用するものなので、高い品質である必要があります。
このように、医薬品は常に「有効性」「安全性」「品質」が要求されます。
薬としての有用性(医療上の価値)は、有効性と安全性のバランスで評価されます。
いまや医薬品は医療に不可欠なものですので、公共性が求められ、安定的に供給される必要もあります。その点では、企業の都合で勝手に生産・供給を中止したり、医療現場に適切に供給されないという事態は許されません。
そして他の工業製品と大きく異なる特徴として、生命に関わるということを踏まえ、厳しい法的規制を受けます。医薬品の管轄は言わずと知れた厚生労働省です。(同じ薬でも動物薬や農薬は農林水産省の管轄になります)

医薬品では効能効果をもたらす有効成分が重要ですが、この有効成分のみで構成されている訳ではありません。薬効成分に添加剤等を加え、使用しやすい形に加工(製剤化)されています。

モノだけあっても何にどう使うのかが解らなければ使えませんが、医薬品の場合、モノを見ただけではどういう効果があるのか、どう使用するのかを理解することはできません。
その点では、物質だけでは医薬品として成立せず、情報があってはじめて医薬品として機能するものと言えます。

体内での動き・・体内動態と薬理作用

薬は生体内でどういう動きをするのでしょうか。体内での動き(薬物動態)は次のプロセスで捉えることができます。(各プロセスの頭文字をとってADMEと呼びます)

  1. 吸収 Absorption
    薬を投与すると体内へ取り込まれ、血液中に移行します。経口投与(のみぐすり)の場合、大半は消化管(主に腸)から吸収されます。消化管吸収が難しい場合は、注射剤によって血液中に直接投与します。直接患部へ投与する外用剤(目薬や塗り薬といったもの)もあります。
  2. 分布 Distribution
    薬は血液を介して全身を巡り、様々な臓器や組織に移行します。目的とする臓器・部位へ到達して薬としての役割(薬理作用)を発揮します。それ以外の場所で何等かの作用を及ぼすと副作用に繋がる惧れがあります。
  3. 代謝 Metabolism
    代謝というのは生体内で薬物の化学構造に変化を生じさせることを言います。役割を終えた薬の構造を変化させることで薬理作用(活性)をなくし、体外排出させやすくします。この代謝は主に肝臓で行われます。
  4. 排泄 Excretion
    薬物を体外へ排出する過程で、主に腎臓から尿として対外へ排出されます。

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薬の作用(薬理作用)のメカニズムについては、【薬の変遷】で述べた通りです。(<化学合成による薬>を参照ください)
分布過程で目的の臓器・部位に到達し、標的となる受容体と反応して効果を発揮します。

薬は目的を持って使用します。期待した本来の働きを主作用、本来の目的以外の働きを副作用と呼びます。
副作用の起きる要因として、以下が挙げられます。また一般に、小児や高齢者への投与には注意が必要です。

  • 薬の性質によるもの:標的部位以外で作用した影響
  • 薬の使用法によるもの:設定した使い方から逸脱した場合や、他の薬との併用等
  • 患者の体質によるもの:アレルギー等
  • 患者の状態・病状によるもの:体調が悪い、肝臓・腎臓の機能に問題がある等

医療用医薬品と一般用医薬品・要指導医薬品

医薬品には、処方箋の必要な「医療用医薬品」と、処方箋の不要な「要指導医薬品」「一般用医薬品」があります。
医療用医薬品は、医師が診断して発行する処方箋に基づいて、薬剤師が調剤して提供されるものです。
要指導医薬品・一般用医薬品は、医師の診断によらずに薬局等で購入し、自らの判断において使用するもので、市販薬とも呼ばれます。市販薬は医療用医薬品に比べて薬の有効成分を少なくする等の対応がされており、特に安全性の確保が最重要視されています。
要指導医薬品は、市販薬としてはまだ新しいといった理由で、安全性管理上、一般用医薬品と区別されています。条件により一般用医薬品に移行されます。
一般用医薬品はリスクに応じて「第一類医薬品」「第二類医薬品」「指定第二類医薬品」「第三類医薬品」に分類されます。
ちなみに、要指導医薬品と第一類医薬品は薬剤師がいないと購入することができません。

先発医薬品と後発医薬品

先発医薬品、いわゆる新薬は「すでに製造販売の承認を与えられている医薬品と、有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が明らかに異なる医薬品」と定義されます。
これに対して、後発医薬品、いわゆるジェネリックは「既承認医薬品(先発医薬品)と有効成分、投与経路、含量、用法・用量が同一で、効能・効果が同等な医薬品」です。

後発医薬品は、通常、新薬の特許期間および再審査期間(販売開始後一定期間)の満了後に市場に出されます。また、先発医薬品に比べて研究開発費および開発期間が縮小されるため、同等な製品をより安価に市場に供給できるという特徴があります。
ただし、通常のジェネリックは、製法や添加物が異なる等、新薬と全く同一のモノという訳ではない点("同等"であって"同一"ではない)に注意が必要です。それに対して、オーソライズド・ジェネリックと呼ばれるものは、先発医薬品の製造販売業者から許諾を得て製造するもので、原薬・添加物、製法等が先発医薬品と同一です。
ちなみに、後発医薬品が「ジェネリック」と呼ばれるのは、欧米で薬効成分の一般名(generic name)で処方されることが多かったことに由来しています。

病院で処方されたり、あるいは薬局で対症療法的に購入したりと薬を使う機会があると思いますが、多種多様な科学的知見を集約した結果として医薬品は生み出されているのです。

私たちの健康に大きな役割を担う医薬品。
その萌芽・誕生から退役までのライフサイクルにおけるプロセスや情報は厳しく重要なものです。そうした製薬のプロセスや情報を支えるITを介して、日立医薬情報ソリューションズは人々の健康に貢献していきます。



2019年07月03日
吉田 亜登美

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